Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓① 

(S614)

自己免疫性膵炎の5例の検討〜超音波像を中心に〜

Study of Autoimmune pancreatitis: Report of 5 cases

梶 恵美里1, 余田 篤1, 青松 友槻1, 井上 敬介1, 奥平 尊1, 赤松 正野1, 増田 大介2, 樋口 和秀2, 玉井 浩1

Emiri KAJI1, Atsushi YODEN1, Tomoki AOMATSU1, Keisuke INOUE1, Takeru OKUHIRA1, Masano AKAMATSU1, Daisuke MASUDA2, Kazuhide HIGUCHI2, Hiroshi TAMAI1

1大阪医科大学小児科, 2大阪医科大学第二内科

1Department of Pediarics, Osaka Medical Collage, Japan, 2Department of Gastroenterology, Osaka Medical Collage, Japan

キーワード :

【緒言】
自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis :AIP)は,わが国より提唱された疾患概念であり,現在は病理学的に1型と2型に分類されている.1型は,IgG4の上昇を伴い,高齢男性に多い.多彩な膵外病変を合併することからIgG4関連疾患の膵病変と考えられている.一方2型は若年で男女差はなく,炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)を合併することが多い.2型AIPは,IgG4の関連しない膵炎として,1型とは別疾患として扱われつつあるが,両者の鑑別は困難であることも多い.今回われわれは,5例のAIPを経験したので報告する.
【対象と方法】
1996年4月から2014年3月まで当科で経験したAIP5例について超音波(US)所見を中心に後方視的に検討した.USでの評価項目は①膵腫大の有無,②膵実質の輝度変化,③主膵管の細狭化,④主膵管の壁肥厚,⑤主膵管の壁不整,⑥主膵管の不自然な屈曲,⑦主膵管の軽度拡張とした.
【結果】
AIP5例の男女比は4:1,年齢中央値は11歳0か月であった.IBD関連AIPが4例(潰瘍性大腸炎;UC=4)で,基礎疾患のないAIPが1例.症状は無症状1例,腹部違和感1例,腹痛3例,黄疸はなし.高アミラーゼ血症と高リパーゼ血症は全例に認め,UC合併例のうち1例のみ血清IgG4値の上昇(IgG4 225mg/dL)を認めた.US所見は①膵腫大は全例,②AIPのUSの特徴とされている実質の低エコー化(Black Pancreas)はUC合併の一例のみ,③主膵管の細狭化は全例,④主膵管の壁肥厚は全例,⑤主膵管の壁不整は4例(UC/非UC=3/1),⑥主膵管の不自然な屈曲像は4例(UC/非UC=3/1),⑦主膵管の軽度拡張像は4例(UC/非UC=3/1)で認められた.ERCPにおいて,2例で主膵管のびまん性狭細化,3例で全主膵管長の1/3以上の狭細化を認めAIPと診断した.胆道系に関しては全例で,胆管壁の不整や狭細化は認められず正常であった.非UCの1例は蛋白分解酵素のみで軽快し,UC合併の4例でステロイドを使用し膵酵素は正常化,US像で膵腫大も消失した.しかしその後,ステロイド減量中や中止後に,3例で膵酵素の間欠的な上昇が数年間持続した.膵生験は4例で施行しておらず,UC合併の1例のみ大腸全摘時に膵生験を施行したが,膵障害は消失しており線維性変化のみであった.
【考察】
USは膵腫大や膵実質輝度の変化だけでなく,主膵管の壁肥厚,壁不整,不自然な屈曲,軽度拡張像も描出可能で,USでAIPを示唆できた.AIPは予後良好といわれているが,自験5例のうち,3例でステロイド治療後も膵炎が反復しており,必ずしも予後良好とはいえない可能性がある.
【結語】
USで膵腫大の所見に加え,主膵管を詳細に観察することはAIPの早期診断に有用で,侵襲的なERCPの適応を決定できた.また,USでの経過観察は治療後の効果判定にも有用であった.