Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓① 

(S613)

膵管癌におけるVirtual Touch Quantification(VTQ)の検討

Utility of Virtual Touch Quantification(VTQ)in pancreatic ductal adenocarcinoma

斧山 巧

Takumi ONOYAMA

鳥取大学医学部附属病院消化器内科

Department of Gastroenterology, Tottori University School of Medicine

キーワード :

【背景】
VTQは音響放射圧を用いて組織に生じた剪断弾性波速度(shear wave velocity:SWV)を測定することにより,組織硬度を定量化する方法である.膵では慢性膵炎で正常膵と比較しSWVが高値であること(Yashima Y et al ; J Gastroenterol 2012),悪性膵腫瘍と背景膵とを比較すると有意に腫瘍部でSWVが高値であることが報告されている(Park MK et al ; Ultrasonography 2014).今回,浸潤性膵管癌症例において腫瘍部と背景膵及び健常者の正常膵のSWVを比較しその診断における有用性を検討した.
【対象と方法】
対象は,2012年9月から2014年8月までに当院を受診した浸潤性膵管癌25例(頭部14例,体部6例,尾部5例),男女比15:10,平均年齢69.2歳(40〜85歳)及び健常者12例男女比11:1,平均年齢57.7歳(29〜84歳)を対象とした.SWVはACUSON S2000(Siemens社)を用いて,Bモード観察下にROI(10mm×6mm)を設定した.1箇所につき5回計測し,最大値と最小値を除いてSWVの平均値を求めた.
【結果】
浸潤性膵管癌症例において2例頭部病変が描出できず,測定可能症例は23例で,平均腫瘍径は35.1mmであった.健常者では全例で膵頭部,膵体部,膵尾部のSWVを測定し,全正常膵のSWVは1.04±0.13m/sであった.浸潤性膵管癌症例の腫瘍部のSWVは2.33±0.93m/sで,背景膵のSWVは1.34±0.61m/sであり,健常者の正常膵及び背景膵と比較し腫瘍部で有意に高値であった(P<0.001,P<0.001).浸潤性膵管癌症例の背景膵と健常者正常膵間ではSWVに有意差を認めなかった.ROC解析においてSWVの膵管癌の診断能は健常者正常膵との比較ではAUROC 0.996,至適Cut-off値1.24m/sで感度95.7%,特異度97.2%,背景膵との比較ではAUROC 0.829,至適Cut-off値1.40m/sで感度85.2%,特異度75.3%であった.病変部位別に比較すると,各部位における腫瘍部,背景膵,健常者正常膵のSWVはそれぞれ,膵頭部2.67±0.98m/s,1.48±0.52m/s,1.00±0.09m/s,膵体部1.92±0.53m/s,1.15±0.12m/s,1.04±0.10m/s,膵尾部2.02±1.05m/s,1.12±0.28m/s 1.07±0.17m/sで腫瘍部と正常膵間のSWVの比較ではそれぞれ膵頭部P<0.001,膵体部P<0.001,膵尾部P=0.003と腫瘍部で有意に高値であった.腫瘍部と背景膵間のSWVの比較では膵頭部でP<0.001と腫瘍部で有意に高値であったが,体部,尾部では有意差を認めなかった.
【結論】
浸潤性膵管癌は,正常膵及び背景膵に比べてSWVは高値であり,VTQは診断に有用である可能性がある.