Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
胆嚢 

(S611)

セフトリアキソンが原因と考えられた偽結石症の成人例の検討

Ceftriaxone-associated biliary pseudolithiasis in adults

小山 里香子, 田村 哲男, 小泉 優子, 今村 綱男, 竹内 和男

Rikako KOYAMA, Tetsuo TAMURA, Yuko KOIZUMI, Tsunao IMAMURA, Kazuo TAKEUCHI

虎の門病院消化器内科

Department of Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【はじめに】
セフトリアキソン(以下CTRX)による偽結石症の報告例はほとんどが小児であり小児科領域では広く認識されているようである.しかし小児に特異的ではなく成人でも起こりうるものであり,時には胆嚢結石が落石して総胆管結石となり内視鏡的処置が必要となる例も存在する.今回我々はCTRXによる偽結石症の成人例を検討したので報告する.
【方法・結果】
2012年6月から2014年7月までに当院で経験したCTRXによる偽結石症の成人例は8例(男性1例,女性7例,平均年齢71.6歳).胆嚢結石8例,総胆管結石7例.投与期間は6日〜47日間,結石判明はCTRX投与開始から2日〜48日後.投与中止により比較的速やかに消失するとされるが,今回の検討例では消失確認は投与中止から11日〜162日後.総胆管結石に対して5例でERCP施行し,3例で回収した結石の分析からCTRXと類似したパターンが得られCTRXによる偽結石の証明がなされた.体重あたりのCTRX投与量は24〜101mg/kg/日で,小児の重症感染症に対する最大投与量が120mg/kg/日までとされていることからその投与量を超える高用量を使用した症例はなかった.また,透析症例が4例あった.US像は胆嚢・総胆管結石いずれも強い音響陰影を伴いエコーレベルが高く描出され,絶食の際に見られるdebrisやsludge echoとは明らかに異なる像だった.
【考察】
CTRXと胆汁酸は同じ排泄経路を通るため,CTRX投与によりCTRXの胆汁排泄が胆汁酸排泄を阻害し胆汁中のイオン化カルシウム(Ca)濃度が上昇.その結果CTRXとCaが複合体を形成し胆石形成につながるとされている.偽結石はUSでは非常にエコーレベルが高く強い音響陰影を伴うという特徴があり,このような像を見た際にはCTRX投与歴を確認する必要があり,既往があれば診断の決め手となる.今回の検討では透析症例が半数を占めており偽結石の危険因子である可能性があった.無症状でその存在に気づかれないまま自然消失したCTRX偽結石症例も多くあると予想されるためCTRX投与例に対しては偽結石の有無をUSでチェックすべきで,胆嚢偽結石が判明した際にはその落石防止のため可及的速やかに投与中止を考慮することが望ましい.CTRX使用により成人でも偽結石症が起こりうることを広く認識しておくことが重要と考える.