Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
胆嚢 

(S610)

超音波検査で胆嚢捻転を診断できた一例

A case of gallbladder torsion in ultasonography

辻井 邦昌1, 山崎 元2, 田儀 知之2, 山野 剛3, 金羽 繁和1, 柳田 節子1, 東山 香織1, 久保 良美1, 大橋 まゆ1, 奥峪 亜実1

Kuniaki TSUJII1, Hajime YAMASAKI2, Tomoyuki TAGI2, Takeshi YAMANO3, Shigekazu KANEHA1, Setsuko YANAGIDA1, Kaori HIGASHIYAMA1, Yoshimi KUBO1, Mayu OOHASHI1, Ami OKUSAKO1

1医療法人東和会第一東和会病院臨床検査科, 2医療法人東和会第一東和会病院消化器外科, 3医療法人東和会第一東和会病院血液内科

1Department of Clinical Laboratoly, Daiichi Towakai Hospital, 2Department of Gastrological Surgery, Daiichi Towakai Hospital, 3Department of Hematology, Daiichi Towakai Hospital

キーワード :

【症例】
85歳女性
【既往歴】
高血圧症
【経過】
近医より急性胆嚢炎の疑いにて本院に紹介された.
本院にて腹部超音波検査を実施した.
①胆嚢短径が57mmと腫大し,体底部の壁は多重リング状構造を呈し12mmと著しく肥厚していたが頚部は多重層構造は認めず壁肥厚も軽度であった.
②胆嚢体部と頚部の連続性が描出できずその間に高エコーの構造物を認めた.
③体底部の壁の血流は描出できなかった.
胆嚢内腔に結石は認めなかった.
肝外胆管は10mmと拡張していたが結石は認めなかった.
肝表面と肝床部にわずかに腹水を認めた.
上記の①〜③が通常の急性胆嚢炎ではあまり見られない所見であった.
以上のことから胆嚢捻転による急性胆嚢炎を疑った.
DIC-CTでは胆嚢が腫大し壁が肥厚していた.
また胆嚢内に造影剤はなく総胆管に結石はなく急性胆嚢炎と診断された.
その後緊急腹腔鏡下胆嚢摘出術が実施された.
胆嚢は体底部が肝床部から遊離し,頚部で時計回りに900°捻転していた.
壁は暗褐色を呈し壊疽性胆嚢炎であった.
胆嚢の偏位は認めなかった.
【考察】
胆嚢捻転の超音波所見としては一般的な急性胆嚢炎の所見や胆嚢の正中偏位,捻転部位を示唆する高エコーの出現等がある.
今回の症例では急性胆嚢炎の所見と壁の多重リング状層構造と体部と頚部の不連続の間にある高エコー部分がみられた.
偏位がみられなかったのは円背があり胆嚢の動くスペースがないためと考えられた.
通常の急性胆嚢炎は頚部側から壁肥厚が起こり全周性に肥厚するが,捻転であれば捻転部を示唆する高エコーの部分を境に体部側は著明な多重リング状層構造であるが虚血のない頚部側には多重リング状層構造を認めないことが重要な所見と考えられた.
【結語】
胆嚢捻転と通常の胆嚢炎との鑑別にも超音波検査は有用と考える.