Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
胆嚢 

(S608)

比較的短期間であっても経口摂取量低下はCTRXによる胆石形成のリスクとなる

Even in a Relatively Short Period of Time, a Decrease in Oral Intake is a Risk of Gallstones assoiated with Ceftriaxone; A Prospective Study

村田 真野1, 井上 敬介1, 青松 友槻2, 余田 篤2

Shinya MURATA1, Keisuke INOUE1, Tomoki AOMATSU2, Atsushi YODEN2

1市立枚方市民病院小児科, 2大阪医科大学小児科

1Department of Pediatrics, Hirakata City Hospital, 2Department of Pediatrics, Osaka Medical College

キーワード :

【背景】
Ceftriaxone(CTRX)の投与に伴い胆石が形成されることがある.CTRXの投与を終了すると比較的早期に自然消失するという,他の胆石症と異なる性質を持つことから偽胆石と呼ばれている.偽胆石はまれに嵌頓発作を引き起こし,さらに頻度は低いが,胆嚢胆管炎・膵炎などの重篤な合併症が報告されている.現在までに報告されているCTRX投与に伴う偽胆石固有のリスクとしては,CTRXの高用量での使用,CTRXの急速静注による投与,脱水,腎疾患の合併,腎障害性薬剤の併用,低アルブミン血症,カルシウム含有輸液の併用などがある.しかし,これらの推測されているリスクに関して統計学的検討を行った報告は少なく,偽胆石症に関してその臨床像の詳細は不明である.そのため偽胆石の実際の頻度や,形成しやすい病態を知ることは有用と考え,今回,CTRXの投与を行った小児に対して前方視的検討を行った.
【対象と方法】
対象は急性疾患で2010年9月から2012年8月まで当院に入院した15歳以下の小児で,CTRX投与前に全例に超音波検査を行い,胆嚢内に胆石,胆泥などの構造物がないことを確認した.胆泥の定義は,胆嚢内に沈殿する高エコー像がみられ,体位変換により移動するものとした.胆石の定義はそれに音響陰影を伴うものとした.投与後3,5,7,10日目に超音波検査で偽胆石形成を追跡した.胆泥もしくは胆石が同定された時点でCTRXの投与を終了した.偽胆石形成群と非形成群の両群間で比較を行った.年齢,性別,有熱期間(37.5℃以上が1日以上持続した状態と定義した),絶食期間(経口摂取が年齢必要栄養量の2割以下が2日以上持続した状態と定義した),CTRX投与量と投与期間,また,CTRX投与前の一般的な血液検査項目(WBC,好中球数,Hb, Ht, CRP, AST, ALT,γGTP, T-Bil, BUN, Cr, Na, K, Cl)を比較した
【結果】
期間中に評価の対象となったのは小児60例(2歳から13歳までの男児23例と女児37例,急性肺炎13例,急性扁桃炎9例,急性中耳炎11例,感染性腸炎11例,上部尿路感染症5例,川崎病5例,扁桃周囲膿瘍2例,蜂窩織炎3例,頚部リンパ節炎1例)であった.川崎病に関しては,初診時に頸部リンパ節炎と暫定診断した症例に対してCTRXを使用し,主要症状が揃い川崎病の診断がついた時点でCTRXの投与を終了した.対象となった全60例中11例(18%)に偽胆石が認められた.CTRXの投与量は60-100mg/kg/日で,投与期間は3-10日間であった.全例,CTRXの投与を中止して7-150日で自然消失し,有症状の症例はなかった.投与前に偽胆石を予測できる有意な血液検査所見はなかった.絶食群(経口摂取量低下群)で有意に偽胆石形成頻度が高かった(p<0.001).
【考察と結論】
発生頻度はすでに報告されているものとほぼ同等であった.比較的短期間の経口摂取量低下(中央値2日間)で偽胆石が形成された.CTRXを使用する場合は,経口摂取量にも留意が必要である.有症状の症例がなかったのは定期的に超音波検査を行い,偽胆石が形成され次第CTRXを中止したためと考えられた.偽胆石の早期発見には,定期的な超音波検査による観察が有用である.