Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
門脈圧亢進症 

(S603)

特発性門脈圧亢進症の硬さと実質灌流動態の検討

Examination of elastography and liver blood flow in IPH

松清 靖, 松井 哲平, 中野 茂, 和久井 紀貴, 池原 孝, 篠原 美絵, 篠原 正夫, 永井 英成, 渡邉 学, 住野 泰清

Yasushi MATSUKIYO, Teppei MATSUI, Sigeru NAKANO, Noritaka WAKUI, Takashi IKEHARA, Mie SINOHARA, Masao SINOHARA, Hidenari NAGAI, Manabu WATANABE, Yasukiyo SUMINO

東邦大学医療センター大森病院消化器内科

Division of GE and Hepatlogy, Toho University Omori MedicalCenter

キーワード :

【はじめに】
特発性門脈圧亢進症(idiopathic portal hypertension:IPH)は,原因不明の門脈圧亢進症であり食道胃静脈瘤や脾腫などを契機に発見されることがしばしばある.診断に際して,肝硬変との鑑別が必要で,一般検査所見,画像検査所見,病理検査所見によって総合的に診断される.確定診断は肝臓の病理組織学的所見に裏付けされることが望ましいとされている.
【目的】
特発性門脈圧亢進症の硬さ診断,肝実質灌流動態が診断に有用であるか検討する.
【対象】
対象は,食道または胃静脈瘤,脾腫がある特発性門脈圧亢進症7例,C型肝硬変13例.
【方法】
IPHと肝硬変の肝実質灌流動態とVs値を比較した.
造影超音波:超音波造影剤Sonazoid®を用いて,肝実質灌流動態を確認した.方法は,早朝空腹時に推奨量の造影剤Sonazoid®を肘静脈から静脈注射する.門脈本幹が描出される部位で30秒間動画記録をし,保存したRaw DataからPerfusion Parametric Image(以下Perfusion PI)を作成する.作成したPerfusion PIから動脈化率(Arterialization Ratio:AR)を算出した.
硬さ診断:シーメンス社製 S2000でVirtual Touch Quantification(VTQ)を用いてVs値を測定する.計6回測定し中央値を測定結果とした.
【結果】
VTQにおける比較結果:IPHのVs値(中央値)は1.4m/sec,肝硬変のVs値(中央値)は2.65m/secであり,Mann-Whitney U検定でp<0.01と有意にIPHは肝硬変と比較いて低値であった.
肝実質灌流動態の比較結果:IPHのAR(中央値)は26%,肝硬変のAR(中央値)は62%であったが,Mann-Whitney U検定では有意な差は認めなかった.
【考察】
IPHと肝硬変の肝実質灌流動態はともに動脈化していた.肝硬変は病期の進行に伴い,門脈血流の低下を代償するように動脈化する.IPHでは末梢門脈枝が閉塞することで動脈化すると推測される.
IPHと肝硬変のVs値は明らかにIPHで低値であった.Vs値は線維化や壊死炎症,胆汁うっ滞などが影響される.このことから肝硬変は線維化が強く,また炎症を伴っていることもありVs値は高値となる.しかし,IPHはincomplete septal cirrhosis(ICS)のように軽度の線維化を伴うことはあるが,慢性炎症による線維化とは異なるとされており,線維化が少ないことがVs値低値になると推測される.しかし,健常肝よりも高値である症例もあり,そこには肝実質灌流動態が関与している可能性がある.
【結語】
IPHの硬さと肝実質灌流動態を測定すること診断に有用である可能性が示唆された.