小田 悠太¹, 野口 瑞恵¹, 村上 結香¹, 石井 勝¹, 内海 良太¹, 新井 悠太¹, 小宮 雅明¹, 若杉 聡⁴, 濱滝 壽伸², 石田 秀明³

Yuta ODA¹, Mizue NOGUCHI¹, Yuka MURAKAMI¹, Masaru ISHII¹, Ryota UTUMI¹, Yuta ARAI¹, Masaaki KOMOYA¹, Satoshi WAKASUGI⁴, Toshinobu HAMATAKI², Hideaki ISHIDA³

¹亀田総合病院超音波検査室, ²東芝メディカルシステムズ営業推進部, ³秋田赤十字病院超音波センター, ⁴亀田総合病院消化器診断科

¹Division of Ultrasonographic Examination, Kameda Medical Center Hospital, ²Sales Promotion Department, Toshiba Medical Systems, ³Center of Diagonostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, ⁴Division Digestive Diagnesis Department of Internal Medicine, Kameda Medical Center Hospital

キーワード :

【目的】
東芝社製超音波検査装置「Aplio 500」に搭載されたPrecision Imaging（以下Precision）は組織の連続性を高め，コントラスト分解能を向上させ，腫瘍の輪郭や消化管の層構造をより鮮明に描出する機能として用いられている．しかし，肝実質の粗造化の評価が困難になるともいわれている．そこで我々は，Precision Imagingで慢性肝障害の評価を試みた．
【対象と方法】
使用機器は，東芝社製Aplio500，使用探触子は3.5MHzコンベックス型探触子である．無作為に選出した12症例（正常肝2症例，脂肪肝2症例，HCV2症例，HBV，アルコール性肝障害，PBC，AIH疑い，肝転移術後，シェーグレン症候群）に対し，Precision0・1・4・7での肝臓における肝実質粗造化，肝表面凹凸，肝表面破線化を比較検討した．肝実質粗造化は，肝脾での比較と肝臓のみの2通りで評価した．評価は静止画と動画を用いて盲検法により2名で行った．肝実質粗造化，肝表面凹凸，肝表面破線化での評価者2名の評価一致率を算出し，評価者2名の評価がわかれたものは，第3者による評価を行い，それを最終成績とした．
【結果】
肝実質粗造化の評価者2名での評価一致率は肝脾での比較が肝臓単独と比べ，Precision1を除き高かった．特にPrecision7では肝脾が12症例中11症例（92％）に対し肝臓単独が12症例中8症例（67％）と大きな差がみられた．肝実質の粗造化の評価では，Precisionなしの場合所見を認めたものが肝臓単独で12症例中6例，肝脾で12症例中9例であった．また，PrecisionなしとPrecisionをかけたもので評価が変わらなかった症例が肝臓単独で12症例中7症例に対して，肝脾で12症例中11症例と安定した結果が得られた．肝表面破線化では，Precisionなしにくらべ，Precisionをかけた場合の方が評価者間の一致率が低下した．肝表面の凹凸は，一致率に一定の傾向を認めなかった．Precision1で所見ありとしているものが多く，肝表面凹凸で12症例中7症例，肝表面破線化で12症例中5症例であった．しかし，Precision4,7では所見ありとした症例が肝表面凹凸でそれぞれ12症例中3症例，肝表面破線化でそれぞれ12症例中1症例と減少した．
【考察】
Precisionは，びまん性肝疾患の評価に適さないと言われている．とりわけ肝実質はPrecisionをかける事によりスペックルパターンが消え，粗造化の評価が難しいとされている．今回の検討においても，肝臓単独で粗造化を評価した場合ではPrecisionをかけた場合の評価にばらつきがみられた．しかし脾臓の実質との対比を行えば単独での評価に比べ評価者間の一致率とPrecisionをかけた場合の評価の安定性が向上し，肝脾との比較であれば粗造化の評価は可能であった．肝表面の凹凸，破線化は，Precisionをかけると有所見率が低下した．肝表面の凹凸の場合，評価者間の一致率に一定の傾向がなく，肝表面の評価の難しさを再認識した．今回の検討症例に進行した慢性肝障害が少なかったため，今後症例を重ねて検討したい．
【結語】
肝実質の粗造化の評価はPrecisionでも可能である．