高木 慎太郎¹, 森 奈美¹, 見世 敬子², 浅野 清司², 古川 善也¹

Shintaro TAKAKI¹, Nami MORI¹, Keiko MISE², Kiyoshi ASANO², Yoshinari FURUKAWA¹

¹広島赤十字・原爆病院消化器内科, ²広島赤十字・原爆病院検査部

¹Department of Gastroenterology, Hiroshima Red Cross Hospital and Atomic-bomb Survivors Hospital, ²Department of Laboratory Medicine, Hiroshima Red Cross Hospital and Atomic-bomb Survivors Hospital

キーワード :

【はじめに】
肝硬化性血管腫は，血管腫の一部が繊維化や硝子様化などの退行性変化を来たしたもので，これまでの報告では，典型的な画像所見に乏しく術前に確定診断を得ることは難しく悪性腫瘍が否定し得ないため，生検や切除標本により診断される．今回我々は，肝硬化性血管腫の診断においてsonazoid^®造影超音波が特徴的な所見が得られたと考えられた症例を経験したので報告する．
【症例】
症例は83歳，女性．認知症にて老人ホームに入所中，肝機能障害を指摘，単純CTにて肝S7に15mm大の腫瘍を指摘され当院紹介．血液検査上は
WBC 6900/μl，Hb 14.5 g.dl，Plt 20.1万/μl，総ビリルビン1.4 mg/dl，AST 24U/l，ALT 32U/l，ALP 401U/l，PT活性度116％，APTT 26.8 sec，抗核抗体80倍，HBs抗原（-），HCV抗体（-）AFP 4.8 mAU/ml，PIVKAII 17mAu/ml，CEA 4.4ng/ml，CA19-9 24.2 U/ml．画像所見では，B-mode超音波ではあきらかな周囲と同等のエコーレベルであきらかな腫瘍を指摘しえなかった．sonazoid^®造影超音波では，後血管相でCTにて指摘の肝S7に一致して境界明瞭な無エコーの完全欠損を認め，reinjectionでは，辺縁から一部は強く，大部分は淡く造影される様子が観察された．造影CTでは，動脈相でわずかに辺縁部の濃染をみとめるもののほぼ濃染はみとめず平行相にて淡い造影効果をみとめた．またS8ドーム下にも同様な所見を呈す10mm大の腫瘍性病変を認めた．MRIではT1 low T2 highで拡散強調像がわずかに陽性であり肝細胞相で明瞭なdefectを認めた．PET-CTではあきらかFDGの集積が得られなかった．悪性腫瘍も否定しえなかったため肝腫瘍生検を施行したが，確定診断がつかず肝部分切除術を施行した．肝腫瘍の肉眼型は2結節とも境界明瞭な白色長の結節で，病理では内腔の乏しい多数の血管が交錯するように増生し，周囲に硝子化した間質を伴っていた．以上より肝硬化性血管腫と診断した．術前の画像診断では，造影超音波の後血管相における完全欠損とreinjectionにおける周囲からの造影がcotton wool様の造影パターンにもみえており，硬化性血管腫の性質を最もよく表していると考えられた．
【結語】
硬化性血管腫ではsonazoid^®造影超音波後血管相で完全欠損が特徴的な所見であり，reinjectionでの造影効果に診断確定に有用となる可能性が示唆される．