塩澤 一恵¹, 渡邉 学¹, 五十嵐 良典¹, 工藤 岳秀², 丸山 憲一², 石渡 誉郎³, 大久保 陽一郎³, 根本 哲生³, 渋谷 和俊³, 住野 泰清¹

Kazue SHIOZAWA¹, Manabu WATANABE¹, Yoshinori IGARASHI¹, Takahide KUDO², Kenichi MARUYAMA², Takao ISHIWATARI³, Yoichiro OKUBO³, Tetsuo NEMOTO³, Kazutoshi SHIBUYA³, Yasukiyo SUMINO¹

¹東邦大学医療センター大森病院消化器内科, ²東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, ³東邦大学医療センター大森病院病院病理科

¹Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, Toho University Medical Center, Omori Hospital, ²Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center, Omori Hospital, ³Department of Pathology, Toho University Medical Center, Omori Hospital

キーワード :

【症例1】
30台女性．数年前に慢性腎不全のため生体腎移植を施行，定期検査の単純CTで，左自己腎に45mm，肝S2に10mmの腫瘤性病変を認めた．Bモード超音波（US）で左自己腎に内部に充実成分を有する類円形嚢胞性病変を認め，カラードプラでは充実成分に拍動性の血流シグナルを有し，腎細胞癌（RCC）が疑われた．一方，肝S2の腫瘤は辺縁に低エコーを伴い，内部は等エコーでbull’s eye sign様所見を呈していた．造影超音波（CEUS）では早期血管相で染影され，後期血管相で染影は低下し，後血管相で境界明瞭なdefectを呈した．造影CTでは肝S2の腫瘤は単純で低吸収，動脈相で濃染し，平衡相で等吸収を呈し，RCCの肝転移が否定できず，左腎摘出術と肝腫瘤部分切除術が施行された．病理組織診断の結果，RCC，肝内胆管腺腫（BDA）と診断された．
【症例2】
70台男性．4年前Sに直腸癌に対して外科的切除術を施行，切除術2年後に肝S4に転移巣を認めたため肝腫瘍部分切除術が施行された．さらにその2年後の経過観察のCTでS4に10mmの造影増強効果を有する腫瘤を認めた．BモードUSでは肝に腫瘤性病変は描出されなかったが，CEUS後血管相でS4にdefectを認め，re-injectionにてdefect部は淡く染影され，その後染影の低下を認めた．以前にS4肝転移に対して切除術を施行していることやCEUS所見から肝転移として矛盾しない所見と考え，肝部分切除術が施行された．病理組織診断の結果，BDAと診断された．
【考察】
BDAは肝小葉内に発生する細胆管様腺癌の増殖病変で，WHO分類では胆管上皮性良性腫瘍に分類される稀な腫瘍である．成因は不明とされるが，炎症や血流などの局所障害に対する反応性病変や胆管周囲付属腺の過誤腫性変化と捉える報告がある．画像検査では通常，単発で肝被膜下に形成される被膜形成のない境界明瞭な結節性病変として描出されることが多いが，画像検査のみでの鑑別診断は難しく，鑑別疾患としては肝細胞癌（HCC）や肝内胆管癌，細胆管癌，肝転移などが挙げられる．症例1ではRCCの存在と肝腫瘤がbull’s eye sign様所見を呈していたこと，症例2では直腸癌術後にS4の転移巣に対して手術歴があり，BモードUSでは不明瞭であったが，CEUS re-injectionで染影されたことからいずれも肝転移が疑われた．2例ともCEUS所見では肝転移の他，HCCなどの悪性腫瘍も否定できず，本検討におけるCEUS所見ではBDAに対する一定の傾向は得られなかった．
【結語】
BDAは稀な胆管上皮性良性腫瘍であり，ソナゾイド^®CEUS所見の報告はなく，今回2症例を経験し示唆に富むと思われ報告した．