Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘍(症例報告①) 

(S579)

超音波画像が診断に一石を投じた肝内胆管癌の一例

A case of intrahepatic cholangiocellular carcinoma : Suggestive ultrasound images in the differential diagnosis

工藤 真一郎1, 増井 美帆1, 詫摩 真久2, 有木 晋平3, 吉住 文孝4, 森本 章生4, 森 宣5

Shinichirou KUDOU1, Miho MASUI1, Masahisa TAKUMA2, Shinpei ARIKI3, Fumitaka YOSJIZUMI4, Akio MORIMOTO4, Hiromu MORI5

1JCHO南海医療センター検査部, 2JCHO南海医療センター放射線科, 3JCHO南海医療センター消化器内科, 4JCHO南海医療センター外科, 5大分大学医学部放射線科

1Department of Clinical Laboratry, JCHO Nankai Medical Center, 2Department of Radiology, JCHO Nankai Medical Center, 3Department of Gastrointestinal Medicine, JCHO Nankai Medical Center, 4Department of Surgery, JCHO Nankai Medical Center, 5Department of Radiology, Oita University Faculty of Medicine

キーワード :

【症例】
77歳女性.
【主訴】
下腿浮腫,体重減少,全身倦怠感
【現病歴】
2年前より体重減少あり.下腿浮腫,全身倦怠感を生じ近医受診し,腹部超音波検査にて膵頭部腫瘤,総胆管結石を疑われ精査加療目的で来院となった.
【入院時現症】
身長138cm体重42kg体温37.2℃血圧91/37mmHg脈拍85回/分腹部平坦,軟圧痛なし.
【入院時検査所見】
WBC 1700/μL,RBC 112万/μL,Hb 4.7g/L,PLT 5.4万/μL,AST 32U/L,ALT 14U/L,T-BIL 0.9U/L,腫瘍マーカーCEA 2.2ng/mL(5.0ng/mL以下),CA19-9 163.4U/mL(40.0U/mL以下)
【超音波所見】
胆嚢に接し30×25mmの不整な低エコー腫瘤を認める.境界不明瞭,辺縁不整,内部不均一な低エコーで腫瘤内に僅かな血流シグナルあり.占拠部位から胆嚢底部を首座とする胆嚢癌を疑った.腫瘤と肝との境界は不明瞭で,肝浸潤を伴うとした.ただ,腫瘤と胆嚢内腔は明瞭に分離でき,胆嚢壁内膜の層構造は比較的保たれ,胆嚢内腔に不整な突出も認めなかった.胆嚢癌を疑ったものの,胆嚢外からの圧排の可能性も否定できず,肝腫瘍との明確な判別はつかなかった.
【CT所見】
胆嚢底部相当部に低濃度腫瘤を認めた.境界は胆嚢側で明瞭,肝側で不明瞭,造影すると早期濃染は見られず,経時的に辺縁がゆっくりと,僅かに造影された.胆嚢癌としては造影効果が弱いものの,腫瘤は胆嚢内腔を占拠するように見え,胆嚢癌とその肝直接浸潤が疑われた.
【入院後経過】
胆嚢癌とその肝浸潤と診断され,胆嚢摘出術+肝切除術が施行された.病理組織診断にて腫瘍増殖の中心は肝内に存在し,門脈域主体の浸潤を認めた.胆嚢粘膜には上皮内病変を認めず,肝内胆管に上皮内癌を伴うことから肝内胆管癌(胆管浸潤型)と診断された.
【まとめと考察】
術前に胆嚢癌との鑑別が困難であった肝内胆管癌(胆管浸潤型)を経験した.肝内胆管癌は肝内胆管に発生し,肉眼的に腫瘤形成型,胆管浸潤型,胆管内発育型に分類される.胆管浸潤型は周囲結合織に浸潤性に発育し,末梢胆管の拡張を伴うことが知られている.今回の症例は腫瘍が胆嚢に接し,胆嚢体底部に発生した胆嚢癌と明確な判別が困難であった.主にCTで胆嚢癌を疑われ,超音波検査で胆嚢癌として矛盾しない所見が得られたものの,胆嚢内膜の連続性を精緻に観察することで,胆嚢外病変の可能性を指摘し得たと思われる.