秋葉 恵美子¹, 水谷 正彦², 石田 秀明³, 渡部 多佳子³, 大山 葉子⁴, 長沼 裕子⁵, 若杉 聡⁶

Emiko AKIBA¹, Masahiko MIZUTANI², Hideaki ISHIDA³, Takako WATANABE³, Yoko OHYAMA⁴, Hiroko NAGANUMA⁵, Satoshi WAKASUGI⁶

¹安房地域医療センター臨床検査室, ²安房地域医療センター外科, ³秋田赤十字病院超音波センター, ⁴秋田組合総合病院臨床検査科, ⁵市立横手病院消化器科, ⁶亀田総合病院消化器診断科

¹Department of Clinical Labolatory, Awa Regional Medical Center, ²Department of Surgery, Awa Regional Medical Center, ³Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, ⁴Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, ⁵Department of Gastroenterolgy, Yokote Municipal Hospital, ⁶Department of Digestive Diagnosis, Kameda Medical Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
肝膿瘍の診断に造影超音波検査が有用である事は広く知られている．これは主に描出した病巣が膿瘍である，という性状診断が中心であった．今回我々は，どのような状況で，造影超音波検査が膿瘍の拾い上げに有用であるか検討し若干の知見を得たので報告する．
使用診断装置:東芝社製：AplioXG, Aplio500，GE社：LogiqE9，日立アロカ社製：Ascendus, Preilus．超音波造影剤はソナゾイド^®（第一三共社）を用い，通常の肝腫瘍の造影方法に準じた．
【対象と方法】
2014年4月〜11月の8月間に造影超音波検査とCT検査で肝膿瘍と最終診断しえた14例に関し，a）その背景肝とBモード検査での病巣描出の可否，とb）病巣描出の可否と造影超音波所見の関連，について検討した．
対象症例の内訳は，男性11例．女性3例，年齢50-89歳（平均69.4歳）で，背景肝は，正常肝9例，脂肪肝1例，肝硬変4例，で，これらの診断は，超音波所見と生化学データを基に決定した．
【結果】
a）14例中5例でBモードでは膿瘍部が検出不能であった．その内訳は肝硬変例3例，脂肪肝例1例，正常肝1例，であった．これは肝硬変4例中3例，脂肪肝1例中1例，正常肝9例中1例，にあたり，膿瘍径は，1cm以下多数3例，4cm以上単発2例，であった．b）なお，検出不能病巣と検出可能病巣間の造影所見に差異は見られなかった．
【まとめと考察】
造影超音波検査は肝膿瘍の診断に有用であり，その所見として，a）多血性縁取り（hypervascular rim），b）壊死部の抜け，などが挙げられ，従来の超音波Bモード検査での診断能の血流情報を加味する強みが如実に表される結果が多数報告されるようになった．しかし，報告例の多くは膿瘍自体はBモードで描出可能で，造影超音波検査の目的は，肝腫瘍との鑑別が中心の質的診断であった．これも造影超音波検査の重要な役割ではあるが，今回の我々の検討のようにその存在診断能に言及したものはまれであった．今回の検討にみられたように背景肝に肝硬変を伴った場合造影超音波が拾い上げ診断に有用であった．これは質的診断以上に，治療の方向性を変えるという点で大きな意味がある．従来，肝膿瘍の診断においてCTに大きく遅れをとっていた超音波診断が造影法を加味することで同等の診断能を示すに至ったと考えられる．今後，肝膿瘍が否定できないケース，特に肝硬変例では積極的に造影超音波を施行すべきと考えられた．なお肝硬変で肝膿瘍病巣がBモード上描出困難な理由として実質パターンが不均一粗造になることが一番考えられるものの詳細に関しては今後の多数例の検討が必要である．
【結語】
造影超音波検査による膿瘍の拾い上げは肝硬変例で特に有用である．