Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
腹部(その他①) 

(S560)

乳癌術後晩期再発により消化管狭窄をきたした一例

A case of digestive tract stenosis due to late onset recurrence of breast cancer

中村 雅美1, 宇治 公美子2, 西谷 暁子2, 飯干 泰彦2, 山村 憲幸2, 藤井 仁2, 今里 光伸2, 今北 正美3, 位藤 俊一2, 伊豆蔵 正明2

Masami NAKAMURA1, Kumiko UJI2, Akiko NISHITANI2, Yasuhiko IIBOSHI2, Noriyuki YAMAMURA2, Hitoshi FUJII2, Mitsunobu IMASATO2, Masami IMAKITA3, Toshikazu ITO2, Masaaki IZUKURA2

1りんくう総合医療センター検査科, 2りんくう総合医療センター外科, 3りんくう総合医療センター病理部

1Clinical Laboratory, Rinku Genral Medical Center, 2Surgery, Rinku Genral Medical Center, 3Pathological Department, Rinku Genral Medical Center

キーワード :

今回我々は乳癌術後6年目に著明な消化管の壁肥厚を伴う腹膜播種再発の一例を経験したので報告する.
【症例】
70代,女性
【主訴】
食思不振,嘔吐
【既往歴】
6年前左乳癌(T2N1M0 StageⅡb)にて乳房部分切除術および腋窩郭清施行
【現病歴】
2週間前より嘔吐,食事摂食不良あり近医受診.腹部超音波検査にて胃壁肥厚を認め胃癌の疑いで当院紹介受診となる.
【入院時所見】
上腹部に手拳大の腫瘤触知.圧痛なし.
【血液検査所見】
白血球4550/μl,赤血球347万/μl,CEA 21ng/ml,CA19-9 248.5U/ml,CA15-3 140.5U/ml
【腹部超音波検査(US)】
胃前庭から幽門部,横行結腸壁が全周性に著明に肥厚し,大網と一塊となっていた.胃幽門部径は23mmで壁層構造は明瞭,横行結腸径は19mmで壁層不明瞭な部位を認め,いずれも蠕動は乏しかった.胃,横行結腸所属リンパ節の腫大を認めた.腹水は上腹部と骨盤に認め,混濁は認めなかったが両側水腎症を軽度に認めた.
【腹部CT】
胃前庭部から幽門部は全周性に肥厚し,漿膜面の染影が強く腹水が認められた.
【上部内視鏡検査】
胃の伸展は不良で幽門前庭部に全周性に狭窄を認め,幽門輪近傍後壁に不整潰瘍を認めた.
【大腸内視鏡検査】
横行結腸に狭窄を認め内視鏡の通過は困難であった.粘膜には不整は認められなかった.癒着や壁外からの圧迫を疑う所見であった.
原発巣としてUSでは大腸癌,内視鏡では胃癌が疑われたが生検では悪性所見は得られず,鑑別診断と胃バイパス術のため審査腹腔鏡施行.胃,小・大腸に全体的に肥厚と肝円索の表面凹凸不整を認めた.腹水細胞診では小型の異型細胞が散在性に出現し,N/C比は増大し核異型,核の偏在性を示し,印環細胞様の細胞も散見された.腹膜,リンパ節の迅速病理診断では悪性であった.胃の肥厚のない範囲が狭くバイパス術は断念し胃瘻造設を施行した.
【病理組織学的所見】
異型細胞が孤立性,索状を呈して浸潤性に増生.免疫組織化学でcytokeratin 7,CEA陽性,PR,ER,HER2,およびE-cadherinは陰性であった.既往歴に浸潤性小葉癌を有することより浸潤性小葉癌再発の腹膜播種と診断された.
【考察】
乳癌の遠隔転移としては骨,肺,肝が多いが,浸潤性小葉癌ではほかの組織型に比べ腹膜播種が多いとされる.本症例では消化管の著明な壁肥厚を認め,消化管原発の腹膜播種との鑑別が必要であった.当院での2011年〜2013年のUSで腹膜播種と診断された38例(胃癌12例,膵癌10例,大腸癌4例,胆管癌3例,肝細胞癌3例,卵巣癌3例,胆嚢癌2例,食道癌1例)では腹腔内の結節病変と腹水混濁を有する症例31例(82%),腹水混濁のみ有する症例7例(18%)であり,本例以外では胃の著明な壁肥厚は認められなかった.著明な壁肥厚を示した腹膜播種にて再発が確認された症例を経験したので報告する.