Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
上部消化管 

(S550)

出血性十二指腸潰瘍を伴った膵動静脈奇形の一例

A case of pancreatic arteriovenous malformation associated with hemorrhagic duodenal ulcer

清水 由貴, 佐藤 幸恵, 前岡 悦子, 二坂 好美, 小島 祐毅, 有吉 彩, 山岸 宏江, 湯浅 典博

Yuki SHIMIZU, Yukie SATO, Etsuko MAEOKA, Yoshimi NISAKA, Yuki KOJIMA, Aya ARIYOSHI, Hiroe YAMAGISHI, Norihiro YUASA

名古屋第一赤十字病院検査部

Clinical Laboratory, Japanese Red Cross Nagoya Daiichi Hospital

キーワード :

【症例】
41歳,男性
【既往歴】
10歳時,十二指腸潰瘍
【現病歴】
2014年4月,下血と心窩部痛を主訴に当院を受診した.上部消化管内視鏡検査にて出血性十二指腸潰瘍を認めたため入院となった.
【経過】
身体所見:体温37.2℃,血圧132/75mmHg,脈拍84/min
入院時血液検査所見:Hb 10.8g/dlと軽度の貧血を認めたが,その他には特記すべき異常を認めなかった.
上部消化管内視鏡検査:十二指腸球部,十二指腸角,下行部に多発びらんと発赤活動性潰瘍(A1 stage)を認めた.
腹部造影CT:膵内から十二指腸球部後壁に突出する径3cmの結節状低吸収域を認め,よく造影された.胃結腸静脈幹の拡張を認めた.
腹部超音波検査:膵頭部に低エコー腫瘤を認めた.この腫瘤はカラードプラエコーではモザイクパターンを呈し,血管性病変が示唆された.この血管性病変は,胃十二指腸動脈,上腸間膜静脈(SMV)へと連続していた.
Dynamic CT:膵頭部腹側に早期動脈相から著明な血管増生を認め,胃結腸静脈幹から上腸間膜静脈(SMV)が早期に造影されたことから膵動静脈奇形(AVM)が疑われた.
入院後,保存的治療が行われたが,下血が持続した.出血部位同定のため,腹部血管造影検査が行われた.
腹部血管造影:後下膵十二指腸動脈,前下膵十二指腸動脈から流入する造影剤で膵頭部が斑状に造影され,早期にSMVが造影された.
以上より膵頭部動静脈奇形を背景とする出血性十二指腸潰瘍と診断され,入院13日目に亜全胃温存膵頭十二指腸切除が施行された.
膵切除標本の割面では膵頭部に蜂巣状領域を認めた.病理組織所見では膵頭部に血管壁の肥厚した動脈様の血管の増生や毛細血管の叢状病変を認めた.弾性線維染色では壁の肥厚した血管は弾性板が欠けており,筋性に肥厚した静脈と考えられ,動静脈奇形と一致する所見であった.
【考察】
膵動静脈奇形の診断にはカラードプラエコーが有用であり,モザイクパターンと拍動性血流の所見が特徴である.本症例でもこの特徴が見られた.また,血流がSMVへ還流する様子もリアルタイムで観察できた.この所見はDynamicCTとも一致していた.膵動静脈奇形は極めて稀な疾患であるが,超音波検査はこの疾患の補助的診断として有用な検査である.