Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・冠動脈 

(S541)

僧帽弁逆流により発見された乳児型左冠動脈肺動脈起始症の左室心筋ストレイン評価

Usefulness of regional longitudinal strain to evaluate the reversed remodeling in infants with Bland -White-Garland syndrome

齊川 祐子1, 2, 安河内 聰1, 3, 島袋 篤哉3, 瀧聞 浄宏3, 田澤 星一3, 中野 裕介3, 蝦名 冴1, 2, 柴田 綾2, 日高 恵以子2

Yuko SAIKAWA1, 2, Satoshi YASUKOCHI1, 3, Atsuya SHIMABUKURO3, Kiyohiro TAKIGIKU3, Seiichi TAZAWA3, Yusuke NAKANO3, Sae EBINA1, 2, Aya SHIBATA2, Eiko HIDAKA2

1長野県立こども病院エコーセンター, 2長野県立こども病院臨床検査科, 3長野県立こども病院循環器小児科

1Echocenter, Nagano Children’s Hospital, 2Department of Clinical Labolatory, Nagano Children’s Hospital, 3Department of Pediatric Cardiology, Nagano Children’s Hospital

キーワード :

【はじめに】
生後4か月に僧帽弁逆流による心不全として紹介された乳児が,心エコーによりBland -White-Garland(BWG)症候群と診断され冠動脈移植術を施行された.その診断および治療経過観察にストレイン解析による壁運動異常の評価が有用であったので報告する.
【症例】
4カ月男児.主訴:心雑音
既往歴,家族歴:特記事項なし.現病歴:生後4カ月時に便秘を主訴として近医小児科を受診し,心雑音を指摘され,心エコー検査で僧帽弁逆流と左室収縮機能低下がみられたため,当科に紹介.
初診時現症:体重6675g,心拍数115,軽度の陥没呼吸を認め,胸骨左縁第4肋間にLevineⅡ度の収縮期逆流性雑音を認めた.
胸部X線上心胸郭比は0.64と心拡大を認め,心電図ではI,aVLに異常Q波と左前胸部誘導のpoor R progressionを認めた.
心エコー所見:左室拡張末期径は36mm144%正常と拡大し,左室拡張末期容積は236%正常,EF 38%,左室前側壁から後側壁にかけて低収縮の壁運動異常を認め,同部位の内膜にエコー輝度の上昇を認めた.心尖部からの左室global longitudinal strain(LS-GS)は-10.6と低下し,左冠動脈支配領域のregional longitudinal strain(LS-rS)の低下を認めた.僧帽弁前乳頭筋および腱索にエコー輝度の上昇および僧帽弁前尖A2からA3に弁尖の逸脱を認め,同部位から中等度以上の僧帽弁逆流を認めた.左冠動脈は主肺動脈から起始し,左前下行枝,左回旋枝に分岐していた.左冠動脈内は連続性の逆流を認め,主肺動脈に流入していた.右冠動脈は3mmで著明に拡大していた.
手術は,左冠動脈再建術と憎帽弁形成術が行われた.術後の左室壁運動のLSの改善は,術後2週では高位前側壁の壁運動異常が残存していたが術後5週では改善がみられた.LS-GSも5週で-11.8と改善した.
【考察】
BWG症候群はまれな疾患で,乳児期に重症化し死亡する可能性の高い疾患である.心電図でI,aVLでのQ波が特徴であるが,確定診断のためには心エコー検査が重要である.心エコー診断においては,左冠動脈の肺動脈起始を直接描出することが基本であるが,実際は起始異常の画像診断は難しいことが多い.右冠動脈の拡張に加え,左室内腔の拡大や僧帽弁閉鎖不全の合併,さらに左室の高位前側壁の壁運動異常を生じる.壁運動異常についてはeye-ballによる評価でも可能であるが熟練を要し,この点でstrainによる解析は定性評価と定量化の点で重要である.通常の心エコー検査に加え左室心筋ストレイン解析を加えることでより明らかに壁運動異常を検出できる可能性があり,本例の術後の経過観察にも有用である.