Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・感染性心内膜炎/その他 

(S532)

拡大傾向にある仮性心室瘤を経時的に観察した一例

A case of expanding left ventricular pseudoaneurysm

林 慶子1, 新井 光太郎1, 植田 ちひろ2, 齋藤 千紘1, 福島 敬子1, 青見 茂之2, 芦原 京美1, 山崎 健二2, 萩原 誠久1

Keiko HAYASHI1, Kotaro ARAI1, Chihiro UEDA2, Chihiro SAITO1, Keiko FUKUSHIMA1, Shigeyuki AOMI2, Kyomi ASHIHARA1, Kenji YAMAZAKI2, Nobuhisa HAGIWARA1

1東京女子医科大学病院循環器内科, 2東京女子医科大学病院心臓血管外科

1Cardiology, Tokyo Women’s Medical University Hospital, 2Cardiovasucular Surgery, Tokyo Women’s Medical University Hospital

キーワード :

仮性心室瘤は心筋梗塞の合併症として知られているがその発生率はまれであり,破裂の危険性から早期の手術が勧められている.我々は仮性心室瘤を手術まで経時的に観察した症例を経験したので報告する.症例は56歳男性,既往歴は55歳時に大動脈基部拡大,上行大動脈瘤に対して大動脈弁輪形成術(David術)と部分弓部大動脈置換術を施行されている.2014年3月頃から労作時の胸部違和感を強く自覚したが,自宅で経過をみていた.同年4月中旬に突然の安静時胸痛を自覚し,胸痛出現後52時間後に当院に受診となった.心電図でⅡ,Ⅲ,aVFのST上昇と心筋逸脱酵素の上昇を認めたため,亜急性心筋梗塞の診断にて緊急入院なった.経胸壁心エコー図を施行したところ,左室後壁(後乳頭筋近傍左房側)に心筋の途絶した部分を約6mm認め,同部位を包むように心尖部前壁方向にエコーフリースペースを認めた.エコーフリースペースのサイズは心尖部長軸像で69×15mm,心窩部アプローチでは60×42mmであった.エコーフリースペースは,左室心筋層との連続性を認めなかったため仮性心室瘤が疑われた.カラードプラ法では左室内腔から心筋途絶部を通って仮性瘤へ交通するto and froの血流シグナルを認め,収縮期の血流速度は3.1m/secであった.緊急心臓カテーテル検査では対角枝90%の狭窄のみであった.左室造影では左室下壁より左室後壁側に沿って造影剤の漏出を認めた.亜急性心筋梗塞に伴う左心室仮性瘤の診断で手術方針となったが,血行動態が安定していたため,大動脈内バルーンパンピング挿入および人工呼吸管理とし,心筋組織の安定を図った.入院7日目の経胸壁心エコー図では心筋途絶部位が6mmから12mm,仮性瘤の大きさは左室長軸像で69×15mmから73×37mmへ拡大を認め,入院10日後に左室形成術を施行した.心室瘤は左室後壁の心基部寄りに認め,切開すると内部に血栓を認めた.左室との交通部は直径20mmであり,30mmのTeflonパッチ修復術を行った.術後の経過は良好であった.拡大傾向にある左室仮性瘤を心エコー図で経時的に観察し得た1例を経験した.