Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・感染性心内膜炎/その他 

(S530)

Strand ruptureによる高度大動脈弁閉鎖不全症を発症した一例

A Case of Severe Aortic Regurgitation due to Rupture of a Fibrous Strand

高橋 久美子, 飯野 貴子, 新保 麻衣, 佐藤 和奏, 寺田 舞, 渡邊 博之, 伊藤 宏

Kumiko TAKAHASHI, Takako IINO, Mai SHINBO, Wakana SATO, Mai TERADA, Hiroyuki WATANABE, Hiroshi ITO

秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学

Department of Cardiovascular Medicine, Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

【症例】
64歳,男性
【既往歴】
頻脈性心房細動の診断で近医に通院していた.ルーチンで行った心エコー検査では,有意な弁膜症は認めていなかった.
【現病歴】
平成26年2月労作時息切れがあり前医を受診し,うっ血性心不全の診断で加療を受けるも,心エコー検査で高度大動脈弁閉鎖不全症を認めたため,精査加療目的に当院へ紹介入院した.経過中,発熱はなく,血液検査上,炎症所見を認めなかった.
【経過】
当院初診時の心エコー検査では,高度大動脈弁閉鎖不全症を認め,EF 40%と収縮能は低下しており左室拡張末期径は68mmと拡大していた.さらに,大動脈弁に可動性のある10mmのひも状構造物が付着しており,感染性心内膜炎を疑った.新たに発症した高度大動脈弁閉鎖不全症により心不全を呈していること,弁尖に10mmのひも状構造物が付着していることなどから手術適応と判断し,大動脈弁置換術を施行した.術中所見では,大動脈弁左冠尖と右冠尖は一部で癒合し,癒合部位にひも状構造物が付着していた.大動脈弁尖の破壊は認めなかった.さらにひも状構造物は,疣贅ではなくfibrous strandであり,大動脈弁は二尖弁であった.以上より,本症例はstrand ruptureによって引き起こされた高度大動脈弁閉鎖不全症と診断した.
【考察】
Fibrous strandは大動脈弁の弁尖縁を構成しており,胎生期遺残物と言われている.Fibrous strand単独では大動脈弁閉鎖不全症の直接的な原因になることは稀であるが,大動脈拡張やstrandの延長・断裂により高度大動脈弁閉鎖不全症を呈するようになる.本症例では右冠尖と左冠尖の弁尖縁をつなぐようにstrandが存在し,そのstrandが大動脈壁に付着していたことで弁尖の安定性を維持していたと思われた.1年前の心エコー検査では大動脈弁閉鎖不全症を認めていなかったものが,strand ruptureを契機として高度大動脈弁閉鎖不全症をきたしたものと考えられた.Strand ruptureによる大動脈弁閉鎖不全症の経時的変化をとらえられた一例はまれであり,ここに報告する.