英文誌(2004-)
一般口演 循環器
心機能/心不全
(S502)
明らかな心不全徴候を認めない小児における左室長軸収縮能の評価
Evaluation of longitudinal left ventricular function in children without definite signs of heart failure
橋本 郁夫
Ikuo HASHIMOTO
富山市民病院小児科
Pediatrics, Toyama City Hosptal
キーワード :
【背景】
心不全症状を認めない小児において,左室駆出のメカニズムを長軸方向と短軸方向の収縮性から考察すること.
【対象と方法】
当院の循環器外来を受診し精査の結果明らかな心不全徴候を有さないと診断した患児890名(年齢は新生児から22.7歳,平均4.4歳)を対象とした.心機能が良好であるとした急性期川崎病患児(60名)と冠動脈障害がなく心機能に問題のないと判断した遠隔期川崎病患児(約305名)も含む.心エコーのM-mode法を用い長軸方向の収縮性の指標としてmitral annular systolic excursion(MAPSE)を用い,短軸方向の指標として左室短軸の拡張末期径(LVDd)から収縮末期径(LVDs)の差をLV radial wall displacement(LVRWD)とした.左室のglobalな機能として左室駆出量(LVSV)をDopplerにより計測した.MAPSE, LVDd, LVRWDおよびLVSVの体表面積0.1m2ごとの平均値と標準偏差から標準化を行いz-valueを計算した.
【結果】
MAPSEのz-valueが最も強いLVSVの予測因子であった(β= 0.36,P<0.0001).LVRWDおよびそのz-valueもLVSVの予測因子にはなっていなかった.MAPSEのz-valueが-2以下を示したものが890名中19例認めたが,そのうち16名(84%)が急性期の川崎病症例であった.しかし,その19例のLVRWDは他と比較して低下はしていなたっか.
【結語】
左室長軸方向の収縮性は短軸方法の収縮性に比べより強く左室駆出に関わっており,これは,心不全徴候を認めない患児においても認められた.MAPSはz-valueを用いることで体格の異なる小児においても左室長軸方向の収縮性を評価可能である.