増子 勝郎¹, 山本 敦史², 笠原 世裕¹, 飯島 知宏¹, 山越 芳樹¹, 弓仲 康史¹

Katsurou MASUKO¹, Atsushi YAMAMOTO², Toshihiro KASAHARA¹, Tomohiro IIJIMA¹, Yoshiki YAMAKOSHI¹, Yasushi YUMINAKA¹

¹群馬大学理工学府, ²群馬大学医学部整形外科

¹Grad. School of Science and Technology, Gunma University, ²Depatment of Ortopaedic Surgery, Graduate School of Medicine, Gunma University

キーワード :

【目的】
組織表面から振動を加えたときに励起されるずり弾性を用いた映像法として，我々は，超音波カラーフロー映像（CFI）の流速推定アルゴリズムをずり弾性波の波面検出に使った，簡便さ，定量性を兼ね備え汎用の超音波映像装置を使い実時間で画像化できる新たなずり弾性波映像法（以降CFI法と呼ぶ）を報告した1）．本稿では本映像法と従来法である用手的な加圧時の歪を画像化するストレイン・エラストグラフィ（以降ストレイン法と呼ぶ）のファントムによる比較実験を行い，得られる画像の質や測定値のばらつきについて評価を行ったので報告する．
【方法】
レオメータ（島津EZ-test）によってヤング率を測定した硬さの異なる3種類の寒天ファントムを測定対象とした．寒天ファントムのヤング率は応力に対して非線形性を示すので1N印加時の歪量からヤング率を求めた．ストレイン法はEUB-7500（日立メディコ）を用いたが，硬さの基準となるゲルをプローブ前面に装着し熟練者が操作することで基準ゲルにおける歪と寒天ファントム内での歪の比（Strain Ratio）を10回測定した．測定ROIの大きさは30mmx20mmである．一方，CFI法では加振源として積層圧電アクチュエータを組み込んだ超音波プローブ一体型プローブを用いて周波数条件に合致する273.6Hzの周波数でファントム上部端点を加振した．加振点を中心に放射状に最大90度の範囲で10面の映像面を設定し，ずり弾性波の伝搬速度像から伝搬速度を測定した．ROIの大きさは20mmx20mmである．
【実験結果】
図（a），（b）が寒天粉末濃度1.5％のファントムで得たCFI法によるずり弾性波の波面像と伝播速度像，図（c）が同じファントムに対して得たストレイン法の映像である．CFI法での測定から，ずり弾性波がファントム中を伝搬している様子がわかる．一方，ストレイン法ではスペックルに似た細かなパターンが出現している．10回測定時の変動係数を求めたところ，ストレイン法に比べてCFI法では最大19％にまで低下し，再現性の高い測定値が得られた．
【結論】
連続的なずり弾性波と汎用の超音波映像装置を用いたCFI法をファントム実験で評価した．この結果，提案法は従来法よりも再現性の高い測定が可能であることが示された．
1）笠原ら，日本超音波医学会第87回学術集会，87-基-021（2014）.