Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
組織弾性 

(S483)

位相回転を除いた瞬時位相を用いた高分解能イメージング

High resolution imaging using instantaneous phase of which phase rotation is removed

炭 親良

Chikayoshi SUMI

上智大学理工学部情報理工学科

Dept of Info & Commun Sci, Sophia University

キーワード :

【目的・対象】
我々は,変位(ベクトル),歪(テンソル),粘ずり弾性率の計測技法の開発を行っている.その中で,多次元の解析信号を導入した.また,任意直交座標軸方向のデジタル検波も高精度に行える様にせしめた.受信信号から,包絡線と瞬時周波数,瞬時位相が求められ,エコー画像や変位計測に使用される.一方,位相回転を除いた瞬時位相については,ほとんど議論されていない.本稿では,その位相を高精度に計測し,さらに,高分解能なエコー画像を生成する.
【方法・結果】
瞬時周波数は,散乱や減衰の影響を受け,また,位相回転を除いた瞬時位相は,組織内の散乱や鏡面反射時に生じる位相変化により決まる.通常の包絡線を用いた画像化では,位相変化は元より,瞬時周波数(位相回転)とその位相変化を用いて表される瞬時位相は用いられていない.変位計測に,我々は,瞬時周波数とフレーム間にて生じる瞬時位相の変化を用いるが,時に,位相回転を除いた瞬時位相はフレーム間にて変化しないことを仮定することがある.少なくとも減衰や散乱に依る周波数変調の影響を低減でき,また,生成されたビームの方向を測ることもでき,変位の高精度計測を実現できるが,実際には組織の並びの変化や歪が生じる場合において位相回転を除いた瞬時位相はフレーム間で変化し,誤差の原因となる.従って,位相追跡法[1]や位相マッチング法[2]が有効である.また,高フレームレートにて微小変位を扱うことも重要である.過去に平面波送波や,本研究会の別稿では複数のフォーカスビームを同時送波して高速にビームフォーミングすることを報告している.3次元やずり波伝搬のイメージングに有用である.
本稿では,この位相回転を除いた瞬時位相に注目するのだが,各位置の局所のスペクトルをMEM法等を用いて求め,その重心を求め,これを用いて表される位相回転を核とする複素指数関数とエコー信号の共役積を求め,高精度に,且つ,高分解能に,求めることができる(周波数や帯域幅の画像化も有用となる).スペックル信号にてその位相を求めた場合に,散乱体の一つ一つを可視化できるわけではないが,いわゆる超解像を施した状況を実現でき,超解像の限界がわかる.この位相を核とする正弦信号に包絡線またはこれに超解像を施した信号を振幅とする信号を掛けて画像信号を生成する.無論,これを包絡線検波すると,対応する解析信号を包絡線検波したときと同一の包絡線が得られるわけだが,解析信号において報告している通り,二乗検波や非線形信号処理を施し,新しいイメージングを行うことができる.
寒天ファントムと乳癌(硬癌)の例で,単純に包絡線信号を掛けて二乗検波し,画像を生成した.解析信号を二乗検波したものと包絡線画像と比較したところ,提案画像の空間分解能が最も高かった.特に深部において良かった.研究会では,振幅に超解像を施した場合と,周波数空間でスペクトル(強度)に直接的に重み付けして超解像を行った場合も比較する.我々が行っているコヒーレント加算や周波数分割を行った場合についても言及する.
【結論】
位相回転を除いた瞬時位相を用いたイメージングは空間分解能の点で有効であった.超解像を施したエコーを用いて変位ベクトル計測を行うと精度が低下することが確認されており,現在,重み付き最小二乗法や正則化法等を用いることを試みている.少なくとも,超解像は高分解能イメージングには有用であり,目的に合わせて使い分けることも考えられる.
 
[1]中山,第59回日超医研究発表会論文集,95,1991.
[2]C. Sumi, IEICE Trans Fundam, vol. E78A, 1665,1995.