Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
マイクロバブル① 

(S476)

ドラッグデリバリーを可視化する培養系の開発

Development of a tumor tissue-mimicking model for evaluating drug penetration

佐々木 東1, 滝口 満喜2, BOS Clemens1, MOONEN Chrit1

Noboru SASAKI1, Mitsuyoshi TAKIGUCHI2, Clemens BOS1, Chrit MOONEN1

1Imaging Division, University Medical Center Utrecht, 2北海道大学獣医学研究科獣医内科学教室

1Imaging Division, University Medical Center Utrecht, 2Laboratory of Veterinary Internal Medicine, Graduate School of Veterinary Medicine, Hokkaido University

キーワード :

【目的】
超音波と血管内投与されたマイクロバブルを用いるドラッグデリバリーにとって,血管内皮細胞および腫瘍間質,腫瘍血管から腫瘍細胞までの距離は,薬剤の腫瘍組織への浸潤を妨げる要因である.したがって,腫瘍組織を模した培養系,つまり血管内皮細胞と細胞外気質を併せ持つ培養系は,超音波とマイクロバブルによるドラッグデリバリーの開発に役立つと考えられる.今回,我々は超音波とマイクロバブルを用いたドラッグデリバリーによる,薬剤の浸潤を評価するための培養系を作成したのでそれを紹介する.
【方法】
人臍帯静脈内皮細胞をI型コラーゲンでコーティングしたセルカルチャーインサート上に播種し,5日間培養した.5日後に腫瘍細胞を埋め込んだI型コラーゲンゲル上に,上述のセルカルチャーインサートを乗せ,超音波とマイクロバブルによるドラッグデリバリーを行った.モデルドラッグとして,デキストラン結合FITC(分子量50万)を用いた.超音波条件は,中心周波数1.3MHz,デューティー比10%,音圧は1.0MPaに設定し,30秒間照射した.照射15分後に,インサートをゲルの上から取り除き,血管内皮細胞をCD31およびVE-Cadherinで染色した.コラーゲンゲルは液体窒素で凍結したのち,凍結切片作成機で切り出し,5切片ごとの蛍光強度を測定した.
【結果】
人臍帯静脈内皮細胞は5日後に細胞シートを構成した.超音波照射のみでは細胞シートに変化が見られなかったが,マイクロバブルを併用するとこで細胞の剥離が起こった.ゲルの蛍光強度は,内皮細胞シートによって,有意に低下した.超音波とマイクロバブルの併用することで,ゲルの蛍光強度は高くなる傾向にあった.
【考察】
今回作成した培養系では,モデルドラッグが内皮細胞シートからどれくらいゲル内に浸潤したかを可視化することができた.同時に,ゲル内でのモデルドラッグの濃度勾配を明らかにすることができた.また,血管内皮細胞シートは薬剤のゲル内への浸潤に影響することが明らかとなった.今後,本培養系を用い,DNAに結合するモデルドラッグを用いた細胞内デリバリーの確認,および抗がん剤の濃度勾配を明らかにする予定である.