Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 腹部悪性腫瘍の早期診断の限界と見逃してはいけない所見 胃癌・大腸癌

(S456)

スクリーニング腹部超音波検査にて診断された大腸癌の検討

Characteristics of colon cancer diagnosed with screening ultrasound

富澤 稔1, 篠崎 文信2, 長谷川 留魅子3, 白井 芳則3, 本吉 慶史4, 杉山 隆夫5, 山本 重則6, 石毛 尚起7, 吉田 孝宣8

Minoru TOMIZAWA1, Fuminobu SHINOZAKI2, Rumiko HASEGAWA3, Yoshinori SHIRAI3, Yasufumi MOTOYOSHI4, Takao SUGIYAMA5, Shigenori YAMAMOTO6, Naoki ISHIGE7, Takanobu YOSHIDA8

1独立行政法人国立病院機構下志津病院消化器内科, 2独立行政法人国立病院機構下志津病院放射線科, 3独立行政法人国立病院機構下志津病院外科, 4独立行政法人国立病院機構下志津病院神経内科, 5独立行政法人国立病院機構下志津病院リウマチ科, 6独立行政法人国立病院機構下志津病院小児科, 7独立行政法人国立病院機構下志津病院脳神経外科, 8独立行政法人国立病院機構下志津病院内科

1Department of Gastrotenterology, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 2Department of Radiology, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 3Department of Surgery, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 4Department of Neurology, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 5Department of Rheumatology, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 6Department of Pediatrics, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 7Department of Neurosurgery, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 8Department of Internal Medicne, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital

キーワード :

【目的】
スクリーニング腹部超音波検査にて診断される大腸癌の特徴を解析した.
【対象】
平成22年4月から26年10月まで当院にてスクリーニング腹部超音波検査を施行し大腸癌が疑われ,その後の精査にて大腸癌の診断に至り手術を施行した11例について解析した.男4例(平均±標準偏差,71.2±5.2歳),女7例(76.4±12.4歳)であった.
【方法】
超音波検査における癌と非癌部の壁の厚さについて解析した.癌部の所見を壁肥厚(W),腫瘤様(M)に分類した.層構造について保たれている,消失している,に分けて解析した.漿膜側の境界が平滑,不整に分けて解析した.手術標本における最大径,深達度を解析した.術前の白血球数,血色素,c-reactiv protein(CRP),carcinoembyonic antigen(CEA),carbohydrate antigen(CA)19-9についても解析した.統計解析にはカイ二乗検定を用いた.
【結果】
壁の厚さは癌部,非癌部では16.1±4.4(mm),2.9±0.4(mm)であった.壁肥厚と腫瘤様はそれぞれ4例,11例であった.Wでは層構造が保たれている2例,消失している2例であり,Mでは7例全てで層層構造が消失していた.有意にMでは層構造が消失していた(P=0.0271).層構造が消失している例では9例中8例で境界が不整,保たれている例は2例全てで境界は鮮明であった.層構造が消失している例で有意に境界は不整であった(P=0.0101).最大径は2.7-8.0(5.0±1.8)cmであった.深達度はpSE,pSSそれぞれ1,10例であった.白血球数,血色素,CRP,CEA,CA19-9はそれぞれ8372±5089(/μl),10.3±3.6(g/dl),4.7±5.5(mg/dl),16.1±15.6(ng/ml),80.0±194(U/ml)であった.
【考察】
大腸癌は肥厚した壁が発見の手がかりとなり,進行した例では腫瘤様の像を呈する.腫瘤様を呈すると層構造が消失し,境界は不整になる.今回検討した全例で深達度はpSSまたはpSEであった.大腸癌がpSEまたはpSSに進展すると壁肥厚が超音波で検出可能になると考えられた.CEA,CA19-9の平均値が高値を呈していたことは進行した状態になるまで診断が困難なことを示唆している.白血球,CRPが高値を,血色素が低値を呈したことは,スクリーニング腹部超音波で診断される段階では大腸癌に伴う炎症,出血が生じていることを示唆している.そのため症状が生じて受診すると考えられる.
【結論】
スクリーニング腹部超音波検査で診断される大腸癌は既に進行している可能性が高い.