Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 造影超音波は肝腫瘍以外の消化器疾患に必要か? 胆嚢

(S435)

胆嚢の造影超音波

Contrast-enhance US for diagnosisng gallbladder disease

大山 葉子1, 石田 秀明2, 長沼 裕子3, 渡部 多佳子2, 星野 孝男4, 三浦 百子1, 高橋 律子1, 草皆 千春1

Yoko OHYAMA1, Hideaki ISHIDA2, Hiroko NAGANUMA3, Takako WATANABE2, Takao HOSHINO4, Momoko MIURA1, Ritsuko TAKAHASHI1, Chiharu KUSAKAI1

1秋田厚生医療センター臨床検査科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3市立横手病院消化器科, 4秋田厚生医療センター消化器内科

1Department of Medical Laboratory, Akita Kohsei Medical Center, 2Department of Center of Ultrasound Diagnosis, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 4Department of Gastroenterology, Akita Kohsei Medical Center

キーワード :

【はじめに】
胆嚢は肝に接し内部が胆汁で満たされているため超音波による観察が最も有効な臓器であり,以前から小病変が検出される機会が多いことは良く知られている.我々も以前の本学会で胆嚢病変の造影超音波所見を多数報告してきた.ここでは,これら過去の経験と最近の知見を基に下記のポイントから,胆嚢病変診断における造影超音波法の有用性を提示する.
【1:胆道系全体の解剖の確認能力が向上する】
胆道系は造影超音波のどの時相でも(病的状態を除くと)無染構造物として表現され,この“抜け”を追うことで胆道系全体の確認能が向上する.これは,近傍臓器(肝,膵など),門脈,肝動脈,が造影されるためである.この“陰性”効果で,通常のBモードでは観察に時間を有する胆嚢管の観察が造影超音波では極めて容易になる.また通常は造影される周囲脈管に無(低)染箇所が出現することで,胆のう疾患に続発する腫瘍栓や血栓が抜けとして可視化される.
【2:急性胆嚢炎の重症度の目安になる】
造影超音波検査早期相では胆嚢動脈-胆嚢壁-周囲肝実質の順で染まるが,急性胆嚢炎が重症化すると胆嚢静脈と思われる周囲肝実質が淡く染まる傾向がある.さらに胆嚢炎の合併症である,胆嚢穿孔に関しては通常のBモードでは確認に苦渋する穿孔箇所の確認が容易となる.また,胆嚢炎にはしばしば肝膿瘍が続発するが,肝膿瘍はBモードでも描出困難なことがあり,肝膿瘍の拾い上げそ(他の疾患と鑑別するための)質的診断が可能である.この様に急性胆嚢炎の病勢や合併症を把握する手段として造影超音波は有用である.
【3:胆嚢隆起性病変の診断手段となる】
胆嚢内に隆起性病変を認めることは極めて日常的である.Bモード検査はこれらの拾い上げ能には優れているが,血流情報が得られないためCT検査など他検査で精査されることが多かった.また胆嚢に頻繁に出現するデブリエコーもしばしば胆嚢隆起性病変との鑑別が必要となる.この不足分は単に血流情報を追加すれば解決することが多く,それが造影超音波検査で十二分に可能である.実際の臨床の場では同じ高さの肝を含む断面設定で胆嚢病変を観察することが一般的である.これは病変の時間軸による造影パターンを観察することで,デブリエコー(無染構造)を否定するだけでなく,胆嚢ポリープ(肝より染まりが弱い)と小胆嚢癌(早期血管相で肝より強く染まり,それ以後の時相では不均一に染まる)の鑑別が可能となる.
【まとめ】
この様に優れた診断能を有する造影超音波検査ではあるが,まだ肝腫瘍以外は腹部領域では保険適応となっていないため,現在は同時に存在する肝病変を拾い上げた後で検査をする,などの苦労が必要である.早期に適応承認がなされる事が期待される.