伊東 風童¹, 阿部 幸雄², 嶋田 芳久¹, 成子 隆彦², 葭山 稔³, 吉川 純一⁴

Kazato ITO¹, Yukio ABE², Yoshihisa SHIMADA¹, Takahiko NARUKO², Minoru YOSHIYAMA³, Junichi YOSHIKAWA⁴

¹春秋会城山病院心臓血管センター, ²大阪市立総合医療センター循環器内科, ³大阪市立大学循環器病態学, ⁴西宮渡辺心臓血管センター循環器内科

¹Cardiovascular Center, Shiroyama Hospital, ²Department of Cardiology, Osaka City General Hospital, ³Department of Cardiology, Osaka City University Medical School, ⁴Department of Cardiology, Nishinomiya Watanabe Cardiovascular Center

キーワード :

【背景】
高度な僧帽弁逆流症（MR）は，容量負荷に対する左室の過収縮を引き起こす．しかし，高度MRに伴う左室の過収縮についての詳細な機序は知られていない．
【目的】
2次元心エコー図のスペックルトラッキング法を用いて高度MRに伴う左室過収縮の機序を調べること．
【方法】
左室駆出率が60％以上の器質性高度MR患者12例に心エコー図検査を施行した．冠動脈疾患や心筋症，心房細動症例は除外した．心尖部四腔像でスペックルトラッキング法を用いて，左室のglobal radial strainおよび左室心内膜側のglobal longitudinal strain，左室心外膜側のglobal longitudinal strain，拡張末期及び収縮末期の左室球形率を求め，健常者群12例と比較した．
【結果】
左室駆出率に両群で有意差はなかった．しかし，左室の拡張末期容量と総駆出量はMR群で有意に大きかった（121±31 ml vs.79±22 ml, p=0.0008; 85±26 ml vs. 51±13 ml, p=0.0006）．心内膜側および心外膜側のglobal longitudinal strainに両群で有意差はなかった．一方，global radial strainはMR群の方が有意に大きかった（37±12％vs. 25±9％，p=0.0096）．左室球形率はいずれの群においても拡張末期に比べて収縮末期で減少したが，その変化量はMR群で有意に大きかった（-0.13±0.08 vs. -0.05±0.07，p=0.016）．
【結語】
スペックルトラッキング法で左室のストレインと球形率を同時に解析した．高度MR例における左室過収縮は，longitudinal方向の心筋短縮の増加ではなく，transverse方向の心筋増厚とそれに伴う内方運動の増強によって生じることが分かった．