Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

奨励賞演題
腎・泌尿器 

(S412)

各種画像検査で腫瘤内微小循環を検討した腎細胞癌の1例

Microvascular blood flow of renal cell carcinorma with US, CT, and MRI

中嶋 真一1, 梁 瑞穂1, 秋山 幸寿1, 千葉 裕2

Shinichi NAKASHIMA1, Zuisui RYOU1, Yukitoshi AKIYAMA1, Yutaka CHIBA2

1東北公済病院生理検査室, 2東北公済病院女性骨盤底再建センター

1Physiology Laboratory, Touhoku Kousai Hospital, 2Female Pelvic Floor Reconstructive Surgery Center, Touhoku Kosai Hospital

キーワード :

【はじめに】
腎細胞癌の組織学的分類において,その約70〜80%は淡明細胞型腎細胞癌であり,嫌色素性腎細胞癌は稀である.嫌色素性腎細胞癌は淡明細胞型腎細胞癌に比べ血管に乏しい腫瘍の為,カラードプラ法のみでは血流検出感度が不十分であり,オンコサイトーマのような良性腫瘍との鑑別に苦慮する.今回Sonazoid®を用いた造影超音波検査,造影CT,造影MRIといった造影剤を用いる画像検査を行うことで腫瘤内微小循環を対比し,悪性腫瘍を疑い,手術により嫌色素性腎細胞癌と診断された症例を経験したので報告する.
【症例】
51歳,男性.主訴は特になし.家族歴は特記事項なし.高血圧症,頚部リンパ管腫摘出の既往歴がある.人間ドックで左腎臓の腫瘤を指摘され,当院泌尿器科に精査,加療目的で紹介となる.超音波検査では左腎上極に腎外へ突出するように内部エコー不均一,境界は比較的明瞭で,辺縁低エコー帯を有する径27×27 mmの腫瘤像を認めた.カラードプラ法では辺縁に血流シグナルは認めるが,腫瘤内へ向かう明らかな血流シグナルは認めなかった.
造影CT検査では左腎上極に造影早期相で強く増強され,後期相に造影剤のwashoutを認める径28 mm大の腫瘤を認め腎癌が疑われた.造影MRI検査では左腎臓にT1WIで腎実質より低信号,T2WIでは腎実質と等信号,DWIで高信号を呈する辺縁平滑で,境界明瞭な約28 mmの腫瘤を認め,造影早期相で強く増強され,後期相でwashoutを呈したことからやはり腎癌が疑われた.造影超音波検査では,Sonazoid®注入直後から腫瘤周囲辺縁から内部へ造影を認め,約12秒より中心部への造影を確認した.またFlash Replenishment Imaging後,1秒以内に腫瘤内血管が造影し始め5秒以内と早期に腫瘤内再環流を認めたことから,腎癌が疑われた.
【経過】
各造影画像検査により腫瘤内造影パターンを確認し,悪性の腎腫瘍が疑われ左腎部分切除術が施行された.
【病理所見】
腫瘍は肉眼的に境界明瞭で割面は灰白色調であった.組織学的には,好酸性の顆粒状細胞質を有する上皮細胞が小型胞巣を形成し密に増殖し,その間に細血管性間質を認めた.病理診断は当初はオンコサイトーマが疑われたが,免疫染色の結果等により最終的にchromophobe RCC(typical variant)であった.
【考察】
乏血性腎腫瘤の腫瘤内微小循環の評価において,超音波検査におけるカラードプラ法は検出感度が不十分であり,造影剤を用いた画像検査が必須と考えられる.造影CT,造影MRIでの造影パターンは明瞭であったが,造影超音波検査ではリアルタイムで腫瘤内への造影剤流入から腫瘤内微小循環が評価出来ること,Sonazoid®は造影剤の排泄帰路が呼気であり,腎機能障害を認め造影CT,造影MRIが行えない患者においても実施可能であることが他二つの検査に比べ有用であると考えられた.乏血性腎腫瘤の腫瘤内微小循環の評価において造影剤を用いた画像検査は必須であるが,Sonazoid®を用いた造影超音波検査は今後第一選択となる可能性がある検査と思われた.