Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

奨励賞演題
産婦人科 

(S411)

胎児先天性心疾患におけるCardiovascular profile scoreの有用性

Cardiovascular profile score in fetuses with congenital heart disease

三好 剛一, 根木 玲子, 釣谷 充弘, 吉田 昌史, 吉松 淳

Takekazu MIYOSHI, Reiko NEKI, Mitsuhiro TSURITANI, Masashi YOSHIDA, Jun YOSHIMATSU

国立循環器病研究センター周産期・婦人科

Department of Perinatology and Gynecology, National Cerebral and Cardiovascular Center

キーワード :

【目的】
胎児先天性心疾患(CHD)の周産期管理において胎児心不全の診断は最重要課題の一つである.胎児心不全診断は主に胎児超音波検査によって行われているが,その客観的な評価法は未だ確立していない.本研究では,胎児超音波検査による胎児心不全評価法としてHuhtaにより提唱されたCardiovascular profile score(CVPS)が,胎児CHDにおける予後予測法として有用かどうか検討した.さらに,心不全のバイオマーカーであるナトリウム利尿ペプチドとCVPSとの相関について検証を行った.
【対象】
2011年〜2014年までに,当センターで胎児診断され周産期管理を行ったCHD 168例を対象とし,13 trisomy,18 trisomyは除外した.
【方法】
母体年齢,分娩歴,心構造異常の種類,合併異常・染色体異常・発育不全の有無,CVPS,Biophysical profile score(BPS),性別,分娩週数,出生体重,Apgar score,臍帯動脈血pHについて診療録より情報収集し,胎児・新生児死亡および生後3ヶ月以内の死亡をアウトカムとして検討した.CHDは心房内臓逆位症候群(18例),左心低形成症候群(15例),右心低形成疾患(23例),二心室を有するチアノーゼ性心疾患(34例),非チアノーゼ性心疾患(36例),不整脈のみ(41例)の6群に分類した.同意が得られたCHD 64例(正常コントロール64例)において,臍帯血及び新生児血中のナトリウム利尿ペプチド(total ANP/total BNP)を測定し,CVPSと比較検討した.統計解析にはt検定,カイ2乗検定,Logistic多変量解析を用いた.本研究は倫理委員会の承認の下で実施した.
【結果】
1.初診時の平均週数は29週で,心外合併異常31例(19%),染色体・遺伝子異常24例(14%),発育不全40例(24%),羊水過多・過少14例(8%)であった.分娩前のBPSは各疾患群で差はなく,CVPSは右心低形成疾患で有意に低かった.経過中にCVPSが26例で増悪した.平均分娩週数38週,出生体重2724g,帝王切開術62例(37%),Apgar score(5分値)≦7点17例(10%),臍帯動脈血pH<7.15 6例(4%)で,各群で差を認めなかった.胎児死亡3例(2%),新生児生存156例(93%),3ヶ月生存150例(89%)で,左心低形成症候群及び右心低形成疾患で有意に死亡率が高かった.多変量解析の結果,胎児・新生児死亡では左心低形成症候群及び右心低形成疾患,分娩週数<37週,CVPS≦5,経過中のCVPS増悪が,生後3ヶ月以内では左心低形成症候群及び右心低形成疾患,出生体重≦2600g,羊水過少,CVPS≦7が独立危険因子であった.
2.臍帯血及び新生児血中ナトリウム利尿ペプチドは,正常と比しCHDで有意に高値を呈しており,CVPSの重症度と良好な相関を示し,新生児血中ANPとの相関が最も強かった(r=-0.78,p<0.01).臍帯血及び新生児血中ナトリウム利尿ペプチドは,不整脈(頻脈,徐脈),高度房室弁逆流の症例で著明に上昇し,胎児不整脈治療により正常例と同等にまで低下することが確認された.
【考察】
胎児CHDの短期予後予測において,左心低形成症候群及び右心低形成疾患が最も強い因子であり,胎児超音波検査による正確な形態診断の重要性が再認識されたが,周産期管理する上でCVPSが有用であることが明らかとなった.CVPSは腔水症,心拡大,心機能(房室弁逆流),静脈系波形異常,臍帯動脈波形異常の5項目(10点満点)からなる比較的簡便な胎児心不全評価法であり,その重症度と心不全マーカーであるナトリウム利尿ペプチドとの相関が確認されたことから,CVPSはより客観性の高い評価法であると考えられた.
【結論】
CVPSはより客観的な心不全評価法であり,胎児CHDの予後予測法として有用であった.