Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

奨励賞演題
基礎 

(S404)

Beamspace Capon法を用いた高コントラスト超音波イメージングにおける計算量低減

Computational complexity reduction for ultrasound high-contrast imaging using beamspace Capon method

奥村 成皓, 瀧 宏文, 佐藤 亨

Shigeaki OKUMURA, Hirofumi TAKI, Toru SATO

京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻

Graduate School of Informatics, Kyoto University

キーワード :

【はじめに】
超音波イメージングにおける,適応型信号処理を用いた高コントラストイメージング手法は近年多く報告されているが,計算量が多いことが問題であった.計算量低減方法の一つとして,beamspace(BS)Capon法が提案されているが,全ピクセルに受信時に焦点形成を行い,焦点形成後のデータに信号処理を行うため,リアルタイムで信号処理を行うことは依然として困難である.そこで,本研究では,焦点形成回数の削減による計算量の低減方法を検討する.
【実験方法と結果】
Field IIを用いて数値シミュレーションを行った.各深さにおいて,2個の点ターゲットを横方向に1mm間隔で並べて配置し,深さ方向の配置間隔を2mmとした.送信信号の中心周波数を2.0MHz,比帯域を50%とし,96素子のプローブを使用した.ピクセルサイズを深さ方向に0.4mm,横方向の走査線間隔を0.05mm,走査線数を81とした.Capon法は測定点からの信号出力を一定とする拘束条件下で出力電力を最小化する.超音波イメージングでは広帯域信号が用いられるため,一般に各素子に時間遅延を与えて焦点形成を行い,焦点からの反射波は各素子での応答,位相が同一となることを拘束条件としていた.本研究では焦点形成位置からの時間遅延量が少ない測定領域において,その時間遅延量を各素子に位相回転を与えるステアリングベクトルで近似する.従来のCapon法では横方向に走査線間隔である0.05mmの間隔で測定を行うが,提案法では27点をまとめ,まとめた領域の中心に焦点形成し,焦点位置からの時間遅延量をステアリングベクトルで近似する.さらに,計算された電力からピーク検出を行い,目標が存在すると推定される方向を検出する.検出されたピーク位置に焦点形成を行い,ピークから左右3点において再度出力電力の計算を行うことで,目標位置の推定電力精度を改善し,高コントラスト画像を描出する.従来の焦点形成のみを行うDelay and Sum法を用いてイメージングした結果を図1(a)に示す.これに比べ,BS Capon法を用いた図1(b),(c)では,分解能,コントラストが向上した.従来法のBS Capon法での焦点形成回数は4050回であるのに比べ,提案法では371回であり,10倍以上の計算量の低減に成功した.
【結論】
本研究により,適応型信号処理を用いた高コントラストイメージングにおける計算量低減の可能性を示した.この事から,適応型信号処理を用いたリアルタイムイメージングの可能性が示唆された.