Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 血管
ワークショップ 血管2 臨床の現場から見た血管エコーガイドラインの役割と課題

(S390)

腎動脈領域

Role and assignment of guideline for ultrasound evaluation of renal artery lesions

平井 都始子

Toshiko HIRAI

奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部

Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University

キーワード :

【現状】
65歳以上の慢性腎臓病の6.8%,末梢動脈疾患例の35〜52%,45歳以上の透析患者の41%に腎動脈狭窄が認められるなどの報告がみられる現状において,2005年のACC/AHAガイドラインで,腎動脈狭窄の診断法として血管エコーがclassⅠに推奨された.高齢化や生活習慣病の増加に伴い,今後さらに腎動脈エコーの需要が増加すると考えられる.このような状況下,昨年「超音波による腎動脈病変の標準的評価法(案)」が作成され,半年間のパブリックコメントを受けて修正後,今年春には「超音波による腎動脈病変の標準的評価法」が公示される予定である.
【ポスター演題】
この標準的評価法は,適応疾患を腎動脈狭窄や腎動脈瘤などの血管病変だけでなく,慢性腎臓病や移植腎の機能評価などにも応用できるようにと考えて作成されている.
今回腎動脈領域に関連した演題として「当院の腎動脈超音波検査の現状」と「心腎関連における腎ドプラエコーの有用性」の2題の応募をいただいた.
「当院の腎動脈超音波検査の現状」では,腎動脈エコーの検査数が2012年の99件から2014年には223件と著増し,対象は男性が7割,検査不可は1.4%と少なく,21例(9.4%)で腎動脈狭窄疑い(腎動脈PSV180cm/sを越えるもの)と診断したと報告している.腎動脈狭窄疑いと診断した症例の内,12例中11例(92%)がCT,MRIまたは血管造影で腎動脈狭窄と診断され,腎動脈エコーの診断精度が高いことを示した.今後,多施設からの報告を待って,腎動脈エコーによる腎動脈狭窄の診断能の再評価や,施設間差を最小限にするための工夫,評価基準の見直しなどを進めていく必要がある.
「心腎関連における腎ドプラエコーの有用性」では,心血管疾患で入院した430例に対して安定期の両腎区域動脈のRIの平均値を算出し,心機能指標や腎機能との関連を検討している.RIは年齢やeGFRなどと有意な相関を認めるが,心不全で入院した群とそれ以外の群で比較すると,安定期のRIは心不全群で有意に高値を示し,年齢やeGFRとは独立した因子であることを報告した.これまでにもRIと腎機能障害や糖尿病性腎症との関連などの報告はみられるが,腎内血流波形と慢性腎臓病や心腎関連を含めた様々な病態との関連について検討されることを期待する.
【ガイドラインの役割と課題】
現在腎動脈エコーに関する到達目標が示されているのは,腎・泌尿器超音波専門医のみである.腎動脈狭窄や慢性腎臓病,糖尿病性腎症など腎動脈エコー検査の適応症例は著増しているが,腎動脈エコーを指導できる専門医はまだ少数である.腎動脈領域においてガイドラインは重要な役割を果たすものと考えられ,さらなる腎動脈エコーの普及をめざし多くの施設で標準的な検査が実施できるように教育の機会を増やすことが当面の課題である.