Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション 血管1 臨床医に伝える血管エコーレポート〜何を見て何を伝えるか?〜

(S376)

臨床医に伝える血管エコーレポート 〜何を見て何を伝えるか?〜 大動脈下肢動脈

Vascular echo report to tell clinicians, Aorta lower extermity artery

中野 英貴

Hidetaka NAKANO

小張総合病院診療協力部

Medical Cooperation Department, Kobari General Hospital

キーワード :

【はじめに】
血管超音波検査に携わるうえで,精度の高い検査を行っても,曖昧な報告や伝わらないレポートを作成しては検査を行った意味はない.伝えるレポートの作成も一つの技術であり,走査法の技術と同等に,検査精度を向上するうえで大変重要である.
【何を見るか】
大動脈や下肢動脈領域において,施設規模によっても多少考え方は異なるが,単に動脈瘤や閉塞の有無を評価すればよいわけではない.病変の部位,病変部の形状,病変部の性状,病変部の範囲など,どの血管がどのようになっているのかの観察が必要である.さらに下肢動脈においては,両側決められた部位にて血流をサンプリングし,ドプラ波形による分類を行うことで,石灰化などで不明確であった病変が明らかとなる.この血流の計測こそ超音波検査の最大の武器になると思われ,収縮期最高血流速度を計測することで,診断に至ることもある.大動脈瘤においてはほぼ無症状で経過し,スクリーニング検査時に偶然発見されることが多い.しかし破裂した際は大変死亡率が高く,決して見落としてはならない疾患である.ガイドライン等を参考に精度の高い計測が必要となる.
【何を伝えるか】
診療科によって依頼内容や伝えなければならない結果は異なるが,経過や手術などの治療を考慮したうえで,全ての診療科に必要としている情報提供ができることが理想である.しかし検査を行うなかで,単に異常の有無のみを求められることもあり,臨床側からは異常を疑って検査の依頼があっただけに,一言異常なしと言うことに大変困惑してしまうことがある.そのようななかで異常の有無にかかわらず,私達の行った全ての情報収集を提供できるのが検査報告書であり,伝わる報告書は決して検査者でなくても,患者さんの病態が伝わってくるものである.大動脈や下肢動脈領域では,報告書の中に決められた部位での血流速度やドプラ波形分類の記述を組み込むことで,スクリーニング検査時に毎回忘れずに計測することができ,病変が進行した際,前回との比較が臨床側に伝わりやすい.さらにTASC分類などを行うことで,評価法を統一することも可能となる.シェーマについては,血管領域では大変有用であり,血流方向や狭窄部位,閉塞範囲の情報を詳細に伝えることができ,さらには不鮮明な超音波画像しか得られなかった症例では,その情報を補うことが可能である.最終的に超音波所見として報告する際,分かりにくい略語や英語が混在した報告は避け,日本語にて記載することで統一性がうまれる.大動脈や下肢動脈領域では依頼科に問わず,血流速度を含めたドプラ波形情報,シェーマによる狭窄部位,閉塞範囲,血流方向などが伝えなければならない情報と思われる.
【まとめ】
血管領域においては広範囲の観察が必要となり,病変部の性状や範囲,狭窄の有無や血流波形など,臨床医に一言では伝えにくいことが多々あり,伝わる超音波レポートは重要である.レポート作成には検査者の技量がそのまま反映され,走査技術と同等にレポート作成の技術も鍛練する必要がある.