Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 乳腺甲状腺
ワークショップ 乳腺甲状腺 FNAしなくてよい甲状腺結節とは?(JABTSとの共同企画)

(S350)

甲状腺偶発腫瘍の頻度と内容

Characteristics and prevalence of thyroid incidentaloma

志村 浩己

Hiroki SHIMURA

福島県立医科大学医学部臨床検査医学講座

Department of Laboratory Medicine, Fukushima Medical University

キーワード :

我が国における甲状腺超音波検査が置かれた立場は,2011年3月11日の東日本大震災により東京電力福島第一原子力発電所事故が発生した結果,劇的に変化している.事故発生より半年が経過した2011年10月より,福島県において震災時18歳以下の全福島県民に対し県民健康管理調査「甲状腺検査」として超音波検査によるスクリーニングが開始された事を契機に,甲状腺超音波検査および超音波検診に対する関心が非常に高まっている.
甲状腺は結節の有病率が極めて高く,成人に対し甲状腺超音波検査を行う事により,20%前後の被検者において結節が発見され,甲状腺癌以外の良性結節の多くは過形成により形成される腺腫様結節である.さらに甲状腺癌の発見率も0.5%前後と高く,乳頭癌がその大部分を占める.一方,また,甲状腺は剖検において潜在癌が非常に高頻度に発見される臓器であり,2-3mm間隔にて甲状腺組織を詳細に検索すると,15%前後に微小乳頭癌が発見されると報告されている.しかし,その腫瘍径はほとんどが5mm以下である.
甲状腺は超音波検査のみならず,頸動脈等の頸部領域を目的とした超音波検査やCT, MRI, PET等の画像診断においても,いわゆる偶発腫瘍に遭遇する機会が非常に多い臓器である.しかし,発見される結節には,寿命への影響,症状出現,機能障害によるQOL低下等に関連しないものも多く含まれるため,過剰診断の危険性が指摘されている.従って,甲状腺結節のスクリーニングおよび診療においては,甲状腺結節(腫瘍)の発見率,精査基準とその性質を理解する事が極めて重要である.