Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 乳腺甲状腺
パネルディスカッション 乳腺甲状腺2 B-modeのみでは判定困難な甲状腺疾患-血流情報とエラストの臨床応用-(JABTSとの共同企画)

(S346)

甲状腺濾胞性腫瘍の鑑別における血流評価と組織弾性評価の意義

Evaluation of blood flow and elasticity of follicular thyroid tumors

村上 司1, 中村 友彦1, 檜垣 直幸1, 谷 好子2

Tsukasa MURAKAMI1, Tomohiko NAKAMURA1, Naoyuki HIGAKI1, Yoshiko TANI2

1野口病院内科, 2野口病院研究検査科

1Department of Endocrinology, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation, 2Department of Laboratory Medicine, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation

キーワード :

【目的】
甲状腺濾胞癌と濾胞腺腫との鑑別におけるBモード,血流評価,組織弾性評価の意義について検討した.
【対象と方法】
2012年6月〜2014年12月に手術が施行され,病理診断が確定した濾胞腺腫(FA)244例(年齢12〜90歳,女性199例,男性45例),濾胞癌(FC)49例(年齢20〜84歳,女性36例,男性13例,微少浸潤型濾胞癌23例,広汎浸潤型濾胞癌26例)を対象とした.Bモード所見は甲状腺結節(腫瘤)超音波診断基準(超音波医学38: 667-670,2011)を参照して評価した.血流評価は腫瘍内部血流のPI,RIによった.組織弾性評価は用手圧迫によるエラストグラフィーにより,所見をgrade 1〜4に分類した.これらの超音波検査はAplio 500(東芝メディカルシステムズ),iU22(Philips),HI VISION 900(日立アロカメディカル)を用いて行った.結果は範囲(中央値)で示した.
【結果】
FA群,FC群の腫瘍径はそれぞれ12〜76(42)mm,13〜73(31)mm.Bモードでの形状不整,境界不明瞭,内部低エコー,内部エコー不均質,高エコー有り,境界部低エコー帯不整または無し,嚢胞形成無しの各所見の陽性率はいずれもFA群に比べFC群で有意に高かった.これら7項目のうち4項目以上を満たすものをFCとすると感度57.1%,特異度87.3%であった.腫瘍内部血流のPIはFA群0.36〜3.93(1.03),FC群0.58〜5.55(1.30),RIは各々0.30〜1.00(0.64),0.44〜1.00(0.72)でPI,RIともFC群で有意に高値であった.PI≧1.27をFCとすると感度54.8%,特異度74.4%,RI≧0.79をFCとすると感度40.5%,特異度85.4%であった.エラストグラフィーではgrade≧3をFCとすると感度65.2%,特異度55.5%であった.Bモード4項目陽性,PI≧1.27,エラストグラフィーgrade≧3のすべてを満たす腫瘍の80%がFCであった.逆にすべてを満たさない腫瘍では96.6%がFAであった.
【Shear wave velocityによる鑑別】
FA 16例とFC 4例とでACUSON 2000(Siemens)を用いて腫瘍内部のshear wave velocityを測定した.FAでは1.41〜2.58(2.17)m/sec,FCでは2.14〜3.04(2.41)m/secで有意差を認めなかったが,未だ症例数が少なく今後の検討を要すると思われた.
【結語】
甲状腺濾胞性腫瘍の鑑別においてBモードに血流評価,組織弾性評価を加えることで濾胞癌のリスクをある程度評価可能である.Shear wave velocityの診断能については今後の検討課題である.