舛本 法生¹, 角舎 学行¹, 宇津内 陽子⁴, 網岡 愛¹, 梶谷 桂子¹, 恵美 純子¹, 重松 英朗¹, 春田 るみ¹, 片岡 健³, 岡田 守人²

Norio MASUMOTO¹, Takayuki KADOYA¹, Youko UZUUCHI⁴, Ai AMIOKA¹, Keiko KAJITANI¹, Akiko EMI¹, Hideo SHIGEMATSU¹, Rumi HARUTA¹, Tuyoshi KATAOKA³, Morihito OKADA²

¹広島大学病院腫瘍外科・乳腺外科, ²広島大学腫瘍外科, ³広島大学病院乳腺外科, ⁴広島大学病院診療支援部

¹Department of Surgical Oncology, Horoshima University Hospital, ²Department of Surgical Oncology, Horoshima University, ³Breast Surgery, Horoshima University Hospital, ⁴Horoshima University Hospital, Medical Treatment Support

キーワード :

【背景】
術前化学療法（Neoadjuvant chemotherapy : NAC）は乳癌の標準的治療の1つである．NACを実施する際，化学療法終了後の効果判定や，さらには化学療法が奏効する患者群と奏効しない患者群を早期に鑑別する治療効果モニタリングがきわめて重要である．超音波検査（ultrasonography : US）は，NAC後の瘢痕組織と遺残腫瘍との鑑別が困難なことから，pCR症例を正確に診断するのは困難である．一方，造影超音波検査（Contrast-enhanced ultrasonography：CEUS）は，描出困難な微細な血管や乏血性の腫瘍に対しても有用であり，カラードプラ法では困難な詳細な腫瘍血管の走行や構築が把握可能である．またCEUSは腫瘍へ流入するソナゾイド^®の輝度の強度と時間変化からTime Intensity Curve（TIC）を作成し，客観的に評価することも可能である．このTICにより腫瘍内の造影効果の減弱を定量化し，各種パラメータが，NACにおける化学療法後の効果判定，および早期効果判定へ応用できうる可能性について検討したので報告する．
【対象・方法】
2012年10月〜2014年10月までにNACを完了し手術を行った，浸潤性乳管癌40症例（mean age±SD, 48.5±10.3 years）を対象とした．NAC終了後，手術前日までにMRI，PET，CEUSを施行し，臨床的効果判定を行った．CEUSの客観的評価方法として輝度の強さと時間変化を表すTime Intensity Curve（TIC）を作成し，①最高輝度（Peak intensity：PI），②最高輝度到達時間（Time to peak：TTP），③流入速度（Wash-in slope：WIS）の3種類のパラメータを以下のように定めた．①PI：（ピーク時の輝度値）−（造影剤が腫瘍に流入する直前の輝度値），②TTP：造影剤が腫瘍内に流入開始してからピークに到達するまでの時間，③WIS：PI／TTP．3種類のパラメータのpCR予測に対する感度，特異度，正診率を算出した．また上記症例のうち20例にNAC開始前およびNAC2コース後の早期効果判定における有用性についても同様の方法で検討した．
【結果】
40症例中14例がNACによりpCRとなった．NAC終了後のCEUSにおけるTICから算出した数値をReceiver operating characteristics curve analysisよりPI，TTPおよびWISのpCRを予測するcut off値をそれぞれ設定した．各パラメータのpCRにおける診断精度はPI（感度：92.9％／特異度：76.9％／正診率：82.5％），TTP（100％／76.9％／85.0％），WIS（92.9％／80.8％／85.0％）であった．NAC後のCEUSは，病理学的効果判定予測において，MRI，PET-CTと同等以上の感度，特異度，正診率を示した．またNAC開始前と比較しNAC2コース後のCEUSにおいてPI，TTPおよびWISが著しく低下した症例においてpCRの可能性が高いことが示された．
【考察】
NAC後およびNAC開始早期のCEUSにおけるTICから算出したパラメータより，pCRを正確に予測出来うる可能性が示唆された．