Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 乳腺甲状腺
シンポジウム 乳腺甲状腺2 乳房超音波検診の意義を考える/J-START(厚生労働科学研究委託費(革新的がん医療実用化研究事業 乳がん検診における超音波検査の有効性検証に関する研究))の結果からの提言(JABTSとの共同企画)

(S331)

乳房超音波検診の精度管理

Quality Control for Breast Ultrasound Screening

中島 一毅

Kazutaka NAKASHIMA

川崎医科大学総合外科学

General Surgery, Kawasaki Medical School

キーワード :

現在の日本の状況において乳房超音波検診導入を想定した場合の,精度管理上の問題点を提起し,現在の準備状況を解説する.
乳房超音波検診の精度管理上のポイントとしては,「要精査基準」,「検査技術の評価と資格認定」,「超音波検査では全データが保存されない」,「推奨超音波診断装置」,「監査方法」などが挙げられる.「要精査基準」,「検査技術の評価」についてはJ-STARTで使われた基準をもとにしていくことになると思われし,「資格認定」と「監査方法」に関しては「日本乳がん検診精度管理中央機構」がその役割を担うことになると考えられる.そこで,今回は「超音波検査では全データが保存されない」,「推奨超音波診断装置」について,私見を述べさせていただく.
乳がん検診精度管理のお手本となるのは,すでに一定の有効性が証明され,検診の基本となっているマンモグラフィだけである.マンモグラフィは2方向で乳房を圧迫,伸展させ,乳房内組織の特定周波数帯のX線吸収特性の差を利用して画像化する方法である.十分な圧迫,伸展がないと画質とポジショニングが悪くなるため,撮影時に痛みを伴うことが欠点であるが,乳房全体の情報が画像内に保存されるため,後から確認することが可能である.一方,乳房超音波検査は検査者が検査時に必要だと判断した断層画像を保存するため,検査者が見逃したり,要精査不要と判断した病変は記録されない,「超音波検査では全データが保存されない」問題が発生する.マンモグラフィと異なり,後から病変検出精度を検証したり,トラブル発生時に証拠とするフルデータ画像の提出をしたりができないことは精度管理上,きわめて重要な問題である.本問題に対し,動画で保存することや自動操作超音波装置の導入も検討するべきかもしれないが,現在の方式では用意には解決しがたい問題である.
「推奨超音波診断装置」は,操作時に見逃さないコントラストやフレームレイト,スキャン時の病変認識性が十分にあること,要精査基準に必要な診断情報が十分に得られる画質であること,また,多くの検査を行った場合,簡便で疲労しにくい操作性であることが基準になる.最近の多くの装置は使用目的によってハードウェア,ソフトウェアが特化されて開発,設定されているため,乳房超音波検査用として販売されている装置を用いれば,ほぼ問題ないと考えられる.しかし,多目的に開発された装置,要精査基準の異なる国や地域用に開発されて装置では状況がことなるため,十分な確認が必要である.実際,血管用の超音波システムが乳腺に使用されているケースを見受けるが,これは推奨されない.乳房超音波検査に適応した探触子+装置を適切に組み合わせて使用し,精度の高い超音波検診を実現してほしい.