Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科3 胎児心臓スクリーニング方法をどうする

(S320)

胎児心臓超音波検査はどうあるべきか

What is the ideal echo scan system for fetal cardiac screening

松岡 隆, 関沢 明彦

Ryu MATSUOKA, Akihiko SEKIZAWA

昭和大学医学部産婦人科学講座

Dept. of Obstetrics and Gynecology, Showa University School of Medicine

キーワード :

先天性心疾患は,その発生頻度の高さと出生後の予後に与えるインパクトの大きさから出生前診断が重要であると言われて随分経つ.現在,意欲的な産科医はその重要性を理解し,自ら学習・研鑽し技能を高め,施設のレベルに関係なく出生前診断を行い,児の予後改善に寄与している.しかしながら,諸外国をはじめ日本においても先天性心疾患の出生前診断率は十分とは言えない.つまるところ,問題点は1.検査システム,2.検査方法の2点に集約される.
当教室では2000から2010年,妊娠中期・後期の2回4-5年目の産科医師により胎児心臓超音波検査(描出断面:四腔断面,3-vessel view,心室中隔,左右流出路,大動脈弓,上大静脈−右心房−下大静脈)をB modeのみを用いて実施した.延べ検査数は11,072件あり,その中の先天性心疾患111例中53例(47.7%)が出生前に診断された.Small VSDと不整脈疾患を除く45例中31例は出生前診断されたが,されなかった14症例には,肺動脈閉鎖症,肺動脈狭窄症,肺静脈還流異常症,大動脈離断症,Fallot四徴症,僧帽弁狭窄,修正大血管転位症が含まれていた.
これらの症例で診断に至らなかった理由を考察すると,描出断面が全く正常であったものはなく,描出断面の精度が不十分である事がわかった.また,妊娠中期と後期の2回行うメリットが十分に生かされていなかった.よって,検査精度管理が重要と考え,妊娠初期(11-13w)に四腔断面のみを観察するスクリーニングを実施し,妊娠中期(18-20週)には4-5年目の医師と超音波専門医がダブルチェックする検査を実施することにした.さらに,上記描出断面に加えカラー,パワーモードによる血流観察を行うことで,弁逆流・狭窄疾患や肺静脈還流異常症の検出にも努めている.観察方法はフレームレートを十分に上げた胎児心臓の観察に適したプリセットを用い,関心領域を十分に拡大した画面で検査を行っている.診断断面(いわゆるview)にこだわらずに,心腔構造と血管のつながりが解剖学的に正常であることを確認している.さらに,静止画のみならず動画でも保存しオフラインでの評価も行っている.STIC法は画像精度が高くないことより用いていない.我々が現在取り組む検査方法による胎児心臓の観察・評価は,時間と人を要する方法ではある.しかし,より緻密な観察に基づいた出生前診断を目指すために,トレードオフ出来ないシステムと考えている.