Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科2 卵巣腫瘍の悪性・良性の鑑別法

(S318)

HDliveおよび3D超音波を用いた卵巣腫瘍の良・悪性の診断

HDlive and 3D ultrasound in assessment of adnexal tumors

金西 賢治, 秦 利之

Kenji KANENISHI, Toshiyuki HATA

香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学

Department of Perinatology and Gynecology, Kagawa University School of Medicine

キーワード :

我が国の卵巣がん患者は年々増加しており,手術療法と分子標的薬を含む化学療法による集学的な治療が行われているが,依然再発率が高く,婦人科悪性腫瘍のなかでは予後不良な疾患である.半数以上は進行がんの状態で診断されることが多く,こういったケースでは腹水の有無に伴う症状や典型的な画像所見,腫瘍マーカーなどを含む臨床所見により,経験ある婦人科医であれば,卵巣がんの診断は容易であるといえる.しかしながら,従来の2D超音波画像による卵巣腫瘍の形態からの診断では,Dopplerなどを併用しても,診断感度は90%程度に留まると報告されている1.2).診断が困難とされる境界悪性腫瘍などを含む卵巣がんのより早期からの正確な診断法の開発が望まれているのが現状である.これまでに我々は3D超音波画像による卵巣がん診断について,その画像の特徴や良悪の鑑別における有用性について報告してきた2-5).これらの特徴として以下のような画像があげられる.
3D Ultrasound surface rendering:
2Dと同様に形態的な評価法であり,主に不整に肥厚した隔壁,不整な乳頭状の突出,充実部分の有無や内腔壁の不整変化を2Dよりもより視覚的に明瞭に確認することができる.しかしながら,その診断能は報告者によって大きく異なっているのが現状である.
3DPD(power Doppler), HD-flow ultrasound:
種々の悪性腫瘍で血流の変化は多く報告されており,3D画像に腫瘍内の血管走行の変化や,血管の増加および血管分岐などの変化をみることで悪性の診断に繋げていく.また血管の密度や血管径の変化および蛇行などの不整な血管走行も悪性の所見と考えられる.また,VOCAL histogram analysisを用いた腫瘍充実部分のvascularityおよびblood flowによる評価もある.
HDlive:
新たな3D超音波画像renderingにより任意の位置から仮想光源を当てることで陰影をつけ,従来の三次元超音波画像よりも,さらに明瞭に肉眼所見に近い画像を描出する技術であるが,3D超音波の応用である特性から,完全な充実性腫瘍の鑑別は困難であるが,主に嚢胞性部分が主体を占める卵巣腫瘍において充実部分の形態の観察には有用であると考えられる.
今回のパネルディスカッションでは,我々の経験した良性,悪性付属器腫瘍の2D, 2D color/power Doppler, 3D power DopplerおよびHDlive超音波像を提示し,その画像の特性や良悪性の鑑別診断における有用性を報告する.
 
1.Valentin L et al. Ultrasound Obstet Gynecol 2006; 27: 438-444
2.Hata T et al. J obtet. Gynecol Res 2011; 37: 1255-11268
3.Hata T et al. J Med Ultrasonics 2014; 41: 181-186
4.Dai SY et al. Obstet. Gynecol. Res 2008; 34: 364-370
5.Kanenishi K et al. Donald School Joumal of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology 2014 in press.