Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科2 最近の超音波診断装置で胎児のどこまで観察可能か

(S309)

先天性食道閉鎖の出生前診断におけるTrachea-Esophagus view(TE view)の有用性

Usefulness of Trachea-Esophagus view (TE view) in prenatal diagnosis of esophageal atresia

須波 玲

Rei SUNAMI

神奈川県立こども医療センター産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Kanagawa Children’s Medical Center

キーワード :

【目的】
羊水過多に加えて,胃が小さいもしくは描出されない場合に先天性食道閉鎖(Esophageal Atresia; EA)が疑われるが,食道盲端の描出に基づく正確な出生前診断は容易ではない.本疾患の発生学的背景を踏まえると気管と食道を同時に描出する断面(Trachea-Esophagus view; TE view)での評価が理想的である.EAの出生前診断における本断面の有用性について検討を行った.
【対象および方法】
妊娠30週以降で羊水過多の精査を行った単胎26例を対象とした.胎児大動脈弓を描出する胸部水平断面で,この右側かつ椎体前面に位置する気管・食道の位置を同定したのちに,プローブを約90度回転させて大動脈弓の長軸断面から,わずかにプローブを右側に傾けて胎児胸骨右縁からビームを入射することで気管・食道の長軸断面が同時に描出される像をTE viewと定義した.長軸断面において食道壁は2本の高輝度な平行線を有することから気管と明瞭に区別される.この断面において上部食道盲端の有無,気管との相対的位置関係,下部食道と気管との交通の有無および羊水嚥下時の食道最大断面径を計測した.
【結果】
EAは5例(Gross A型:1例,C型:4例)で,全例が上部食道盲端の描出によって出生前診断された.4例で下部食道が気管分岐部直下の位置に同定された.下部食道の内腔が描出された1例では気管食道瘻も描出された.上部食道盲端は全例で大動脈弓より尾側であり,出生後に食道の一期的修復術が可能であった.また術後に気管軟化症を生じることなく全例が抜管可能であった.EA以外の21例中2例が先天性筋ジストロフィー,3例が胎児甲状腺腫,6例が骨系統疾患であった.器質的疾患のなかった10例の食道最大断面径の中央値が3.8(3.2-5.1)mmであったのに対して,EAでは9.1(7.4-9.5)mmと有意な拡張が,器質的疾患を認めた11例では,2.2(1.5-2.5)mmと有意な狭窄がそれぞれ認められた(p<0.01, p<0.05).
【結論】
EAの約90%は上部食道に盲端を形成しており,羊水の嚥下に伴う食道内腔の拡張が顕著であることが発見の契機となり得る.TE viewでは上部食道の盲端のみならず,下部食道の同定や気管との位置関係の評価が可能であることから,欠損部の位置や長さに基づいた一期的根治術の可能性や呼吸障害の重症度予測も可能となり得る.