Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器3 適切なRFAのsafety marginとは?

(S284)

肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法のablative marginについての検討〜5mmが適切か?〜

Ablative margin of radio frequency ablation therapy for hepatocellular carcinoma

池原 孝1, 松清 靖1, 松井 哲平1, 塩澤 一恵1, 和久井 紀貴1, 永井 英成1, 渡邉 学1, 工藤 岳秀2, 丸山 憲一2, 住野 泰清1

Takashi IKEHARA1, Yasushi MATSUKIYO1, Teppei MATSUI1, Kazue SHIOZAWA1, Noritaka WAKUI1, Hidenari NAGAI1, Manabu WATANABE1, Takahide KUDO2, Kenichi MARUYAMA2, Yasukiyo SUMINO1

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

1Dept. of Gastroenterol. & Hepatology, Toho University Ohomori Medical Center, 2Abdominal Ultrasound Labo, Toho University Ohomori Medical Center

キーワード :

【目的】
肝細胞癌(HCC)に対するラジオ波焼灼療法(RFA)のablative marginは,全周で5mm以上獲得することが望まれているが,5mmが適切かどうかは明らかではない.Ablative marginと局所再発の関係,局所再発の原因について検討する.
【対象】
RFA直後の画像検査で残存がないことが確認されRFA後1年以上経過観察できた,2012年6月〜2013年12月当科でRFA施行の連続HCC127例168病変.RFA後観察期間は中央値661(371〜916)日.背景肝は,慢性肝炎:19,肝硬変Child-Pugh A/B: 79/29例,HCV/HBV/Alcohol/NASH/その他:87/19/9/5/7例.腫瘍径中央値15(7〜38)mm.このうち23病変はOPE,TACE,RFA等治療後局所再発病変.
【方法】
極力ablative marginを獲得できるように超音波ガイド下で経皮的RFAした.通常の超音波で描出困難な病変に対しては,造影超音波やRVS(multi fusion),人工胸水・腹水作成して治療した.RFA装置は,Cool-tip RF system(Coviden)あるいはCelon POWER(Olympus)を用いた.電極針は,ablative marginを十分獲得するため,周囲脈管等病変占拠部位に問題がなければ,腫瘍径10mm以下で非絶縁長20mm,11mm以上で30mmのdeviceを1回(本)穿刺,20mm以上では30mmのdeviceを複数回(本)穿刺して焼灼した.肝表面に存在する病変は小型腫瘍でも周囲に複数回(本)穿刺し焼灼した.また,病変が消化管等他臓器近傍に存在する場合は偶発症なくablative margin獲得する目的で人工腹水を作成して治療した.RFA後1週間以内に画像検査(CT,造影超音波,EOB-MRI)を行い,腫瘍残存がなければ治療終了とし,RFA根治度(Radicality grade; R grade)を3段階(R1:残存はないが全周のablative marginはない,R2:全周にablative marginはあるが5mm未満,R3:全周5mm以上のablative marginがある)で評価した.治療後1年以上画像検査で経過観察し局所再発の有無を確認して,再発原因について検討した.
【結果】
RFA直後の根治度はR1: 24病変(14%),R2: 67病変(40%),R3: 77病変(46%).全対象のうち局所再発は13病変(8%),根治度別ではR1: 6病変(25%),R2: 4病変(6%),R3: 3病変(4%)であった.局所再発率はR1とR2,3で有意差を認めたが,R2とR3の局所再発率に有意差はなかった.
【考察】
局所再発はR1に多くablative marginの不足が原因と考えられたが,R1の病変は全て脈管近傍に存在しcooling effectや穿刺経路の問題による焼灼不足がablative margin不足の成因と推測された.全周にablative margin獲得(R2,3)したにも関わらず局所再発した病変も認めたが,いずれもOPE,TACE,RFA等治療後に局所再発を繰り返していた病変であるため,腫瘍の悪性度上昇がablative margin 5mmの外側に再発した成因と考えられた.
【結語】
全周のablative marginは,特に初発病変においては必須であるが,5mm以上とは断定できない.また,治療歴から悪性度が高くRFA後に危機的再発が予測される病変には十分な注意が必要であるが,RFA前に画像診断等で予測できるかは今後の課題である.