Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器4 腹部検(健)診判定マニュアル導入の壁vs導入事例 (消化器がん検診学会共同企画)

(S272)

腹部超音波検診判定マニュアルの導入に向けて

Experience of the use of a category judging and a judgment manual

今吉 由美1, 乙部 克彦1, 日比 敏男1, 橋ノ口 信一1, 安田 慈1, 辻 望1, 堀 優1, 高田 彩永1, 熊田 卓2, 金森 明2

Yumi IMAYOSHI1, Katsuhiko OTOBE1, Toshio HIBI1, Shinniti HASHINOKUTI1, Shigeru YASUDA1, Nozomi TSUJI1, Yuu HORI1, Ayae TAKADA1, Takashi KUMADA2, Akira KANAMORI2

1大垣市民病院形態診断室, 2大垣市民病院消化器内科

1Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
当院健康管理科の超音波所見は人間ドック学会の診断基準(以下,ドック学会診断基準)を現在も使用しており腹部超音波検診判定マニュアル(以下,判定マニュアル)は導入できていないのが現状である.今回,我々は実際に判定マニュアルが運用された場合,拾い上げられた所見の判定区分に差が生じるかをドック学会診断基準と判定マニュアルの判定区分で整合性を検証した.
【対象】
2011年4月から2014年3月に当院健康管理科にて腹部超音波検査が施行された4924名である(男性2688名,女性2236名,平均年齢52.7歳).
【方法】
肝臓,胆嚢・胆道,膵臓,腎臓,脾臓ごとに現在当院で使用しているドック学会診断基準と腹部超音波検診判定マニュアルで判定区分を対比した.
【結果】
肝臓:脂肪肝1304例(26.5%),嚢胞1156例(23.5%),血管腫406例(8.2%)は全例一致した.慢性肝障害4例(0.1%)はドック学会診断基準ではC,判定マニュアルでD2と差が生じた.また充実性病変38例(0.8%)はドック学会診断基準ではD2判定となるが判定マニュアルでは径15mm未満14例(0.3%)がCとなり差が生じた.
胆嚢・胆道:胆石271例(5.5%),腺筋腫症141例(2.9%)は全例一致した.胆嚢ポリープ径5mm未満559例(11.4%),径5〜9.9mm298例(6.1%),径10mm以上9例(0.2%)の中で,径5〜9.9mmの57例については判定区分では但し書きに当てはまり(点状の高エコーや桑実状のエコーを伴う場合はB)一部判定区分に差が生じた.また,ドック学会診断基準では壁肥厚は3mm以上とされているが判定マニュアルでは4mm以上を対象とするため3例(0.1%)は所見から外れる結果となった.
膵臓:描出不良4例(0.1%),膵管拡張8例(0.2%),低エコー腫瘤像3例(0.1%)は全例一致した.嚢胞性病変45例中14例(0.3%)は径が5mm未満のためドック学会診断基準Cが判定マニュアルでBとなり差が生じた.
腎臓:嚢胞687例(13.9%),血管筋脂肪腫33例(0.7%)は全例一致した.ドック学会診断基準では腎結石671例(13.6%)はCとなるが判定マニュアルでは径10mm未満633例(12.9%)はBとなり差が生じた.
脾臓:嚢胞11例(0.2%),低エコー腫瘤像3例(0.1%)は全例一致した.ドック学会診断基準には脾腫の計測についての詳細な記載がないため当院で基準としている長径×短径≧40cm2を脾腫とし,43例(0.9%)が当てはまった.判定マニュアル記載通りに所見を見直すとすべて最大径10cm以上,15cm未満に該当し,判定区分Bと差が生じた.
【考察】
当院の結果から,従来より使用しているドック学会診断基準と判定マニュアルを対比すると慢性肝障害が判定区分経過観察から要精査に変わることを除けば,肝臓充実性病変,胆嚢ポリープ,膵嚢胞,腎結石,脾腫についてはサイズや画像所見から軽度異常や経過観察可能となり一部,精査を省くことができる結果となった.
判定マニュアルでは所見に含まれていた悪性所見はすべて拾い上げられており,精査の必要がない良性所見を省くことができるため積極的導入することが好ましいと考えられる.
周知の如く,腹部超音波検査は検者の技量に大きく左右されるため誰もが同じように所見を拾い上げるためには知識・技量が求められる.施設ごとの検者教育,さらには自施設の検査水準を客観的に計るため精度管理にも積極的に参加する必要があると考える.その他にも所見用紙や所見入力システムの見直し,システム変更にかかる費用等も考えなくてはならない.