Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器3 消化器疾患における新技術

(S268)

携帯超音波装置:現状と近未来

Portable US: present and near future

石田 秀明1, 渡部 多佳子1, 長沼 裕子2, 大山 葉子3, 小川 眞広4, 長井 裕5

Hideaki ISHIDA1, Takako WATANABE1, Hiroko NAGANUMA2, Yoko OHYAMA3, Masahiro OGAWA4, Hiroshi NAGAI5

1秋田赤十字病院超音波センター, 2市立横手病院消化器科, 3秋田厚生医療センター臨床検査科, 4駿河台日本大学病院消化器肝臓内科, 5NGI研究所

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 3Department of Clinical Laboratory, Akita Kousei Medical Center, 4Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Hospital, 5New Generation Imaging Laboratory

キーワード :

携帯超音波装置も今では“持っていて当たり前”,“使って当たり前”の時代になりつつある.しかし,その活用法や認識には大きな個人差がある.ここでは,携帯超音波装置の現状を総括し問題点を整理し,最後に携帯超音波装置の近未来像について述べたい.
テーマ(消化器診療に与えるインパクト):手のひらで操作できる唯一の科学の目であり,日常診療で行われている,視診,触診,打聴診,に次ぐ,“エコー診”として定着できること.救急診療,在宅診療,外来診療,などのあり方が大きく変わること,が本装置が与えるインパクトである.
1)装置について:現在市販されているものは,電子走査型(Vscan(GE Healthcare社))と機械式走査型(Sonimage:P-3(コニカミノルタ社)のものに大別される.
a)電子走査型:従来sector probe一本のみであり肝深部や膵の観察に適していたが,浅部,特に胆嚢底部や消化管の観察に難があり,これで腹部を観察する場合これらの観察困難箇所の存在が検査に不安を残した.最近登場したdual probe(従来のsector probe(1.7-3.8MHz)とlinear probe(3.4-8.0MHz)を両端に配備されたprobe)を有するdual probe Vscanではこの欠点をかなり払拭した.これにより腹部救急疾患の半数を占める消化管疾患(特に虫垂炎.など)に関しても,従来の“ほとんどみえず”から“強く疑える”まで向上した.ここでは従来のsector probeとlinear probeの画像を供覧し,各々の特性や使い分けに関しても述べたい.
b)機械式走査型:指向性に優れているがカラードプラ機能はない.電子走査型プローブと異なりプローブ先端が取り外し可能.使い勝手に関しては機械式は動きが遅くモーターの振動などもあるが臨床的には十分使用可能である.ここでは両者の画像を提示し,電子走査型と機械式走査型の差異について述べる.
携帯超音波装置の近未来:多機能(造影,3D)の方向もありえるが,携帯超音波装置はそもそも小型でシンプルである事が大前提である事を考えると,やはり向かう方向は,ケーブル(コード)レスであろう.そのヒントとなる装置が最近登場したケーブルレス超音波診断装置(Acuson Freestyle)である.電波法など種々の制約があり画質的には若干問題があるが,超音波診断装置が向かう大きな方向性を明確にしている装置である.携帯超音波装置がケーブルレスになることで機動力が飛躍的に向上することは明白であり,これは1日も早く実現して欲しい.ここでは,参照装置であるそのAcuson Freestyleについても述べる.
携帯超音波装置普及のための課題:1)更なる軽量化(現在の約400g.を200g以下に),2)短時間充電長時間活用,は早急の対処すべき課題と思われる.しかし,一番の課題は超音波教育であり,視野深度やゲイン調整の意味も分からず当てた瞬間に(教科書に記載されていたような)美しい画像が自動で飛び出さないとすぐ検査を止める“おままごとエコー“がまだ大半を占めている状態では携帯超音波装置の持つ機動力などを議論するレベルではない.この実態に関しても多施設での技術指導の際の声を基にまとめましたのでそれも述べます.