Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器3 消化器疾患における新技術

(S268)

NASHにおける脂肪酸特定に向けた音響物性解析

Acoustic properties analysis towards fatty acid specific in NASH

山口 匡1, 丸山 紀史2, 伊藤 一陽3, 入江 奏3, 吉田 憲司1, 横須賀 収2

Tadashi YAMAGUCHI1, Hitoshi MARUYAMA2, Kazuyo ITO3, Sou IRIE3, Kenji YOSHIDA1, Osamu YOKOSUKA2

1千葉大学フロンティア医工学センター, 2千葉大学医学研究院, 3千葉大学工学研究科

1Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 2Graduate School of Medicine, Chiba University, 3Graduate School of Engineering, Chiba University

キーワード :

【目的】
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の非侵襲定量診断を実現するための手法として,NAFLDの発現や進展など一連の病態に深く関与していることが指摘されている脂肪酸について,超音波観察により特定することを検討している.本研究では,生体で代表的な5種の脂肪酸(オレイン酸,パルミチン酸,パルミトオレイン酸,リノール酸,αリノレン酸)に注目し,異なる脂肪酸における音響的性質の差について,中心周波数80 MHzの超音波により観察し検討した.また,マウスおよびラットのNASHモデルを用いて肝臓内の脂肪および線維組織の音響特性についても併せて検討した.
【方法】
はじめに,脂肪酸単独での検討として,ポリプロピレンチューブに至適溶媒で溶解した各種脂肪酸1.5 mlを静置し,バイオ超音波顕微鏡にて80 MHzの超音波で観察した.次に,脂肪酸処理細胞での検討として,Huh7 cellを使用し,35 mm dishに500,000c ells/wellを培養したのち,既報に従って脂肪酸処理(500μM,9h)を行い,同システムで観察した.これらの観察結果より,それぞれについての音響インピーダンスを算出した.また,マウスおよびラットのNASHモデル肝臓を摘出し,同システムでの観察を行い,その結果から音響インピーダンス,音速および減衰を算出した.
【結果と考察】
脂肪酸での検討結果として,脂肪酸のインピーダンスは,オレイン酸1.49±0.01,パルミチン酸1.55±0.003,パルミトオレイン酸1.91±0.01,リノール酸1.56±0.03,αリノレン酸1.51±0.01であり,オレイン酸のインピーダンスが最も低いことが示された.脂肪酸処理下培養細胞での検討では,各種脂肪酸処理後の細胞モデルにおけるインピーダンスは,オレイン酸1.47±0.04,パルミチン酸1.65±0.03,パルミトオレイン酸1.65±0.03,リノール酸1.64±0.03,αリノレン酸1.67±0.03であり,脂肪酸単独での信号計測結果と同様に,オレイン酸処理モデルでは有意に低値であった(p<0.01).
マウス・ラットモデルでの検討結果においては,特に肝実質,脂肪および線維の音速において有意差が確認されており,それらを総合して検討することにより,将来的に生体内の肝臓について各生体組織の組成の違いを定量検定できる可能性が示された.