Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器2 もう一度考える,組織所見から見た超音波画像

(S264)

肝線維化が脂肪肝の超音波所見へ与える影響

The impact of hepatic fibrosis on ultrasonographic finding of fatty liver

松居 剛志1, 瀧山 晃弘2, 真口 宏介1

Takeshi MATSUI1, Akihiro TAKIYAMA2, Hiroyuki MAGUCHI1

1手稲渓仁会病院消化器病センター, 2手稲渓仁会病院病理診断科

1Center for Gastroenterology, Teine-Keijinkai Hospital, 2Department of Pathology, Teine-Keijinkai Hospital

キーワード :

【背景】
脂肪肝の超音波所見は一般的に肝腎コントラスト陽性,脈管不明瞭化,深部減衰であり,これらを満たす場合に脂肪肝と判定される.一方,組織学的には,脂肪滴を伴う肝細胞が30%以上認められる場合に脂肪肝と診断される.しかしながら,実臨床では脂肪肝の超音波所見と組織所見との解離例に遭遇することがある.これらの解離例の原因は不明な点が多く様々な要因があると考えられている.
【目的】
脂肪肝の超音波所見に肝の線維化が与える影響を明らかとする.
【対象】
臨床上,ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎などが除外され,肝生検が施行された42例中,組織学的に脂肪領域が30%以上で脂肪肝と診断された32例.
【対象の背景】
年齢55(15-74)歳,BMI 29.3(20.4-41.5),AST 60.5(25-399)IU/l ALT 86.5(20-646)IU/l,ALP 247(129-571)IU/l,γGTP 76.5(24-569)IU/l,T-Bil 0.6(0.3-1.8)mg/dl,血小板20×104(5.5×104-28.5×104)μlであった(以上中央値).組織学的脂肪化領域は50(30-80)%であり,新犬山分類のF因子(0:1:2:3:4)は7:10:9:4:2でA因子(0:1:2:3)は2:21:9:0であった.
【方法】
新犬山分類のF因子によりF2, 3, 4群(17例)とF0, 1群(15例)の2群に分類し,脂肪肝の超音波所見と比較検討した.なお,今回,肝腎コントラストにより客観性を持たせるため,PACS上で肝実質と腎実質の同じ深さに,それぞれROIを置き,肝/腎を算出した.同一症例でこの作業を2回行い,平均値を肝腎コントラスト値とした.
【結果】
両群で血液データでの差は認めなかったものの,BMIはF2, 3, 4群が高い傾向を示した(p=0.0823).脂肪化領域(F0, 1:F2, 3, 4)は50%:50%で,超音波所見は脈管不明瞭化あり16例:15例,深部減衰あり15例:14例であり,これらの所見は両群では差は認めなかった(N.S.).一方,肝腎コントラスト値では1.27:1.15であり,有意な差は見られないもののF2, 3, 4群で肝腎コントラスト値が低い傾向が見られた(p=0.0966).
【考察】
脂肪肝における線維化は超音波の脂肪肝の所見とされる脈管不明瞭化と深部減衰には影響していなかった.この原因として前所見の2つは肝硬変症例にも認められる所見であることが考えられた.また,今回の検討では線維化進展例では肝腎コントラスト値が低い傾向にあった.これはF2,3,4の群ではBMIが高い傾向を示したことにより,深部減衰がより強く出現し,肝腎コントラストがつきにくかったことや,組織学的に脂肪化領域が多い領域に線維化が入り込むことにより,超音波の反射源が減少する可能性などが考えられるが,現段階ではあくまで推測にすぎず,今後の更なる検討が必要と考えられる.臨床的には肝腎コントラストが強くても必ずしも線維化が進行しておらず,注意を要すると考えた.
【結語】
脂肪肝の超音波所見である脈管不明瞭化,深部減衰は線維化進展例でも認められるものの,線維化進展例では肝腎コントラストがつきにくくなる傾向があり注意を要する.