瀧聞 浄宏

Kiyohiro TAKIGIKU

長野県立こども病院循環器小児科

Department of Pediatric Cardiology, Nagano Children’s Hospital

キーワード :

胎生期初期には，心臓は原始心筒とよばれる一つのチューブであり，これが右側に折れ曲がるループを形成して，その右側が右室となり，左側が左室となる．このとき心臓形成に重要なNk2，GATA, Tbx, Handなどの遺伝子はそれぞれの部位で異なるパターンの発現を見せて，右室，左室，流入路，流出路の異なった形態，心筋の緻密化，心筋層の差異などを形作る．このような遺伝子を含めた胎生期の異常が先天性心疾患を発生させる訳だが，右室に関連する形態変化もさまざまなパターンで起きる．流出路の異常であるファロー四徴症，心房−心室の接続，心室−大血管接続関係の異常である大血管転位症や修正大血管転位症，左室が異常に低形成になり，心室がほぼ右室の左心低形成や右室性単心室など，右室は，pulmonary ventricleになったり，両心室をもったsystemic ventricleになったり，Fontan循環のsystemic ventricleになったりする．それぞれで前負荷，後負荷の様相が異なり形態変化も含めた右室のresponseも違ってくるため，これらを考慮に入れながら右室機能評価に対する心エコー検査を施行する必要がある．
1）Pulmonary RV
ファロー四徴症術後肺動脈閉鎖不全，遺残肺動脈狭窄の程度によって右室機能が左右される．右室不全は運動耐容能やVTなどの不整脈発生など予後に影響を与える．
2）二心室が存在するSystemic RV
修正大血管転位症における右室や大血管転位症のMustard手術後やSenning手術後の右室では，右心不全，三尖弁閉鎖不全が問題となる．心房ルート狭窄やAgingなども関連する．
3）Fontan循環のSystemic RV
Pulmonay VnetriclenのないSystemic RVである．心筋線維走行の主体である左室がなく，前負荷が低下し，後負荷が上昇している循環である．LOSの状態といえる．
収縮に関して言えば右室は複雑な形態をしており，左室のように幾何学的推定をもとにしたbiplane modified Simpson法のEFなどは使用できない．RV FAC, Tei index, TAPSE, TDIのs waveなどを使用することが多い．先天性心疾患おいて多数例の正常値はまだないが，それぞれのconditionで臨床的にどのように心エコーの各指標を示し，評価してゆけばよいかを概説したい．