Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム 領域横断2 これって超音波でしょう.超音波検査の正しい使い方とそれに応えるための検査のポイント

(S190)

陰嚢の超音波検査のポイント

Role of sonography of the scrotum

入江 健夫

Takeo IRIE

武蔵野徳洲会病院放射線科

Radiology, Musashino Tokushukai Hospital

キーワード :

【解剖学的構造と超音波検査法】
精巣は楕円形の腺で強靭な白膜に包まれているが,超音波検査上,正常の精巣は線状の高エコーを示す白膜に全周性ではないがかなりの範囲を被われるように存在している.その内部エコーは均一で卵円形の充実性構造として描出され,一部に帯状高エコーを示す精巣縦隔や管状無エコーを示す中隔動脈を認める.精巣には辺縁の一部に突出性の乳頭状構造物が認められ,精巣垂(Appendix testis)と言われる.精巣上体にも精巣上体垂(Appendix epididymis)があり,比較的よく観察される.精巣上体は薄い白膜で被われ,頭,体,尾の3部に区別される.精巣の上極・下極に接して描出される精巣上体は,精巣に比して僅かにエコーレベルが低く,頭部ならびに尾部が半円形・半月状に描出され,頭部は尾部より大きい.体部は通常不明瞭である.超音波上,精巣上体頭部の大きさは5-12mm,体部は2-4mm,尾部は2-5mmほどである.走査に当たっては,主として7.5〜10MHz程度の高分解能探触子を使用する.疾患により適宜,3〜5MHz程度のものを併用したり,音響カプラを利用する.陰嚢内病変の有無の観察においては,必ず二方向での確認とともに,対側との大きさや形態における比較が重要である.通常のBモードによる病変の有無や血管性病変の評価にかかわらず,カラードプラ/パワードプラを用いた陰嚢内構造物の血流の確認が必須である.精巣の栄養動脈は腹部大動脈から分岐する精巣動脈と内腸骨動脈から分岐する精管動脈である.この精巣動脈と精管動脈は末梢側で精巣上体動脈を形成し吻合する.精巣の静脈は蔓状静脈叢から精巣静脈・下大静脈を介する経路と蔓状静脈叢から精管静脈・膀胱静脈・内腸骨静脈に還流する経路が存在する.蔓状静脈叢は,正常では1.5mm以内であるが,静脈瘤では2-3mmの太さを呈する.
【陰嚢病変の超音波診断】
腫瘤性病変の評価にあたって,二つの重要な点が存在する.一つは病変の存在部位がどこかということ(精巣内か精巣外なのか),もう一つは嚢胞性病変か充実性病変かということである.以上の点において,超音波検査は他のモダリティーに比して簡便で詳細に判別が可能である.また,精巣外病変の大部分は,精巣上体嚢胞・精液瘤,陰嚢水腫,精巣上体炎,ヘルニアなどの良性病変とされ超音波検査のみで十分診断しうる.その他,外傷性病変やそれに伴う血腫の有無は通常のBモード像で確認でき,精索静脈瘤の程度や精巣捻転症の有無もカラードプラ/パワードプラによる診断が有用である.一方,精巣内外の腫瘍性病変の質的診断は困難なこともあるが,その存在診断に関しては超音波検査が最も簡便である.以上,陰嚢内の様々な病変の診断において,その第一選択と考えられる超音波検査のポイントにつき,CT,MRIと対比しながら自験例を中心に呈示する.