Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 総合・その他
総合・その他

(S805)

術前超音波検査が施行された腹部皮下発生Solitary fibrous tumorの1例

Solitary fibrous tumor of the subcutaneous tissue of the abdominal wall in which US was performed for preoperative evaluation: A case report

忽那 明彦1, 森川 翔太1, 平塚 妙子1, 甲斐 亮三1, 筒井 佳奈1, 久冨 栄子1, 原田 詩乃1, 古谷 清美1, 安森 弘太郎1, 中山 吉福2

Akihiko KUTSUNA1, Shota MORIKAWA1, Taeko HIRATSUKA1, Ryozo KAI1, Kana TSUTSUI1, Eiko HISATOMI1, Shino HARADA1, Kiyomi FURUYA1, Kotaro YASUMORI1, Yoshifuku NAKAYAMA2

1国立病院機構九州医療センター放射線科・臨床研究センター, 2国立病院機構九州医療センター病理部

1Department of Radiology, Clinical Research Institute, National Hospital Organization Kyushu Medical Center, 2Department of Pathology, National Hospital Organization Kyushu Medical Center

キーワード :

【はじめに】
Solitary fibrous tumor(以下SFTと略記する)の多くは胸膜関連病変として生じるが,近年,胸腔外発生例の報告が増加している.今回,術前超音波検査が施行された稀な皮下発生のSFTの1例を経験したので報告する.
【症例】
70歳代の女性.高血圧と高脂血症(内服加療中)以外に特記すべき既往歴なし.約2ヶ月前より左下腹部の膨隆を自覚し,近医より当院皮膚科へ紹介受診となった.来院時,左下腹部に可動性良好な腫瘤が触知された.超音波検査では,左下腹部皮下に境界明瞭な約46×20mm大の腫瘤を認めた.辺縁に被膜様の低エコー部あり,内部は比較的均一な軽度低エコーを呈し,後方エコーは不変の部と一部軽度増強した部が混在していた.カラードプラ法では腫瘤背側辺縁から内部に分布する血流が認められ,比較的富血性の充実性病変の存在が示唆された.CT及びMRIで病変内の石灰化や脂肪成分は明らかではなかった.CT, MRI上の造影効果や,T2強調画像における病変背側のflow voidの存在もあり,富血性の病変が示唆された.血管腫や神経原性腫瘍,また部位としては稀ながらSFTなどが鑑別に挙がった.患者希望もあり,腫瘍摘出術が施行された.腹壁浸潤なく,被膜を有する表面平滑な皮下腫瘍で,割面は白色主体で一部褐色調,変性壊死部は認められなかった.病理学的にSFTの診断が得られた.
【考察】
SFTは有意な性差なく,中年以降に好発する.胸腔内に多いが全身あらゆる臓器・軟部組織に発生し得る.皮下の発生例は特に少なく,検索内で16例の報告が認められるのみである.辺縁整,境界明瞭な病変で,辺縁に栄養血管を伴うことが多いとされる.本症例におけるカラードプラ上の所見は栄養血管や,病変内血管・血流を反映していた可能性が推察される.
【結語】
皮下病変の超音波所見は非特異的で診断に苦慮することが多い.辺縁及び内部血流有する境界明瞭な病変の鑑別疾患の1つとして,部位としては稀ながらSFTの可能性を念頭に置く必要があると考えられる.