Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 総合・その他
総合・その他

(S804)

成人後腹膜成熟嚢胞性奇形腫の1例

A case of retroperitoneal mature cystic teratoma in adult

忽那 明彦1, 森川 翔太1, 平塚 妙子1, 甲斐 亮三1, 筒井 佳奈1, 久冨 栄子1, 原田 詩乃1, 古谷 清美1, 安森 弘太郎1, 桃崎 征也2

Akihiko KUTSUNA1, Shota MORIKAWA1, Taeko HIRATSUKA1, Ryozo KAI1, Kana TSUTSUI1, Eiko HISATOMI1, Shino HARADA1, Kiyomi FURUYA1, Kotaro YASUMORI1, Seiya MOMOSAKI2

1国立病院機構九州医療センター放射線科・臨床研究センター, 2国立病院機構九州医療センター病理部

1Department of Radiology, Clinical Research Institute, National Hospital Organization Kyushu Medical Center, 2Department of Pathology, National Hospital Organization Kyushu Medical Center

キーワード :

【はじめに】
成熟嚢胞性奇形腫は性腺(卵巣,精巣)に好発し,卵巣良性腫瘍のうち最も頻度が高いものであるが,今回比較的稀と思われる後腹膜成熟嚢胞性奇形腫の成人例を経験した.
【症例】
症例は20代男性.右上腹部痛を主訴に他院を受診し,児頭大の腫瘤触知され,精査・加療目的で当院に紹介受診となった.来院時の超音波検査では右上腹部に12cmを超える境界明瞭な腫瘤性病変が認められた.右腎内側前方に位置し,病変により十二指腸近位部は外側前方へ圧排,膵は腹壁直下に至る著明な前方圧排を来たしていたが,いずれとの連続性も明らかではなく,後腹膜由来の病変が示唆された.病変内は比較的均一な高エコーを呈する部が主体であったが,一部には石灰化を示唆する音響陰影が認められた.また,脂肪と水の液面形成を疑う所見も認められ,成熟嚢胞性奇形腫が鑑別に考えられた.後日CTにおいても病変内部の石灰化と,脂肪と水による液面形成が確認され,画像所見より成熟嚢胞性奇形腫が疑われた.病変が大きく,腹痛症状もあったことから,待機的に開腹腫瘍摘出術が施行され,病理学的に成熟嚢胞性奇形腫の診断が得られた.悪性所見は認められなかった.
【考察】
一般に後腹膜腫瘍自体が稀で種類も多く診断に苦慮することも多いが,卵巣成熟嚢胞性奇形種の超音波診断については高い特異度(感度58%,特異度99%)の報告1)がある.成熟嚢胞性奇形種が後腹膜(後腹膜腫瘍の6〜18%2, 3))に発生しうることを念頭に置き,走査にあたっては,歯牙や骨による音響陰影やfat-fluid levelなどその特徴的所見の有無に留意する必要があると思われる.
【結語】
後腹膜成熟嚢胞性奇形種の成人発症例で,術前診断に超音波検査が有用であった.
【文献】
1)Mais V,Guerriero S, Ajossa S, et al:Transvaginal ultrasonography in the diagnosis of cystic teratoma. Obstet Gynecol 85:48-52,1995.
2)Wolski Z,Jasinki Z:Retroperitoneal teratoma.Int Urol Nephrol 13:137-140,1981
3)溝手博義,藤政篤志,龍忠彦ほか:教室で経験した後腹膜腫瘍の統計的ならびに臨床的観察.外科42:1032-1035,1980