Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター コメディカル
体表・その他

(S787)

アキレス腱肥厚における超音波画像の検討

Achilles tendon thickening evaluation by Ultrasound image

宮崎 寿哉1, 鈴木 清文1, 武末 雅史1, 犬飼 博1, 肥田木 辰洋1, 山田 隆之2

Hisaya MIYAZAKI1, Kiyofumi SUZUKI1, Masafumi TAKEMATU1, Hiroshi INUKAI1, Tatsuhiro HIDAKI1, Takayuki YAMADA2

1聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院画像診断部, 2聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院放射線科

1Department of Diagnostic Radiology, St. Marianna University Seibu Hospital, 2Department of Radiology, St. Marianna University Seibu Hospital

キーワード :

【背景・目的】
家族性高コレステロール血症(Familial Hypercolesterolemia:FH)に伴うアキレス腱肥厚は比較的頻度が高く診断価値が高いと言われている.しかしながら超音波での診断基準がなく時に診断に苦慮する.動脈硬化性疾患予防ガイドライン(日本動脈硬化学会:2012年改訂版)ではX-Pにて9mm以上をアキレス腱肥厚としているが超音波検査での特徴的な画像所見の記載はなく標準化されていない.今回我々は多くのアキレス腱を観察することによりアキレス腱肥厚の超音波画像タイプの分類及びアキレス腱肥厚のカットオフ値を求めた.
【対象】
下肢静脈(静脈瘤・DVT)超音波検査及び糖尿病教育入院中の頚部血管超音波検査施行患者.
下肢静脈検査:225名,頚部血管検査:83名,合計308名.616肢
男性115名 女性193名 平均年齢64.1歳
なおアキレス腱の外傷歴及びアキレス腱炎が疑われる患者は今回の検討から除外した.
【方法】
1)アキレス腱を短軸及び長軸像で観察しアキレス腱肥厚の画像タイプ分類を行う.
2)アキレス腱厚を計測する.左右いずれかの最大値をアキレス腱厚とした.
3)アキレス腱厚とコレステロール値(LDL-C)を比較検討する.
患者体位は下肢を下垂させ下腿と足底を90°の状態とし,高周波リニアプローブを用いてアキレス腱の観察及びアキレス腱厚の測定をした.
【結果】
1)約10%に正常とは異なる低エコー部を認めるものが存在し,4つの型に分類した.
Ⅰ型:正常パターン.腱はfibrillar patternを示すもの.275名(89.3%).
Ⅱ型:低エコー結節型.アキレス腱内に限局した低エコー結節像を認めるもの.19名(6.2%).
Ⅲ型:低エコー肥厚型.アキレス腱全体が低エコーを呈しているもの.10名(3.2%).
Ⅳ型:石灰化沈着型.低エコーを呈するアキレス腱内に石灰化を伴っているもの.4名(1.3%).
2)アキレス腱厚は3.2〜18.8mm.平均4.91±1.2mmであった.
Ⅰ型:3.5〜6.3mm.4.83±0.5mm
Ⅱ型:4.6〜7.6mm.6.24±0.6mm
Ⅲ型:6.3〜18.8mm.9.68±3.8mm
Ⅳ型:6.3〜10.4mm.8.05±1.5mm 
アキレス腱全体が低エコーを呈しているⅢ型及びⅣ型とⅠ型では有意差を認めた.(p<0.001)
Ⅰ型では7mmを超えるアキレス腱厚は見られずⅢ型・Ⅳ型ではほとんどの症例が7mm以上であったことからカットオフ値は7mmが妥当と思われた.
3)アキレス腱厚とLDL-C値に相関は見られなかった.
【まとめ・考察】
アキレス腱肥厚に見られる低エコー部はコレステロールの沈着や黄色腫の存在が疑われた.アキレス腱肥厚のカットオフ値を7mmとすることによりこれまでのX-Pだけではなく超音波検査においてもアキレス腱肥厚を指摘できる可能性があると考えられた.
今回アキレス腱肥厚症例とLDL-C値に相関は見られなかったがこれは多くの症例で既にスタチン系などのコレステロール低下薬を服用していたためと考えられた.
被ばくがなく簡便に施行できる超音波検査はアキレス腱肥厚の検索手段として提案できるものと考えた.