Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 頭頸部
頭頸部

(S774)

頸動脈エコー検査で診断し得た硬膜動静脈瘻の一例

A male patient with dural arteriovenous fistula diagnosed by carotid artery ultrasonography

竹川 英宏1, 國分 則人2, 鈴木 圭輔2, 岡村 穏1, 岡部 龍太1, 3, 岩崎 晶夫1, 沼尾 文香2, 平田 幸一2, 高田 悦雄4

Hidehiro TAKEKAWA1, Norito KOKUBUN2, Keisuke SUZUKI2, Madoka OKAMURA1, Ryuta OKABE1, 3, Akio IWASAKI1, Ayaka NUMAO2, Koichi HIRATA2, Etsuo TAKADA4

1獨協医科大学神経内科脳卒中部門, 2獨協医科大学神経内科, 3公立阿伎留医療センター内科, 4獨協医科大学超音波センター

1Stroke Division, Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 2Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 3Department of Internal Medicine, Akiru Municipal Medical Center, 4Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University

キーワード :

【はじめに】
硬膜動静脈瘻(dAVF:dural arteriovenous fistula)は硬膜に発生する異常な動静脈短絡であり,頭蓋内動静脈奇形全体の10から15%を占めており,年間0.29人/10万人の発生頻度で,頭蓋内出血や静脈梗塞の発症が20.9%に認められる.通常はmagnetic resonance imaging(MRI)やMR angiographyでの異常血管の描出や直接的な脳血管撮像(DSA:digital subtraction angiography)で診断がなされる.一方,頸動脈エコー検査は動脈硬化の状態を把握するために,スクリーニングとしても広く用いられている.われわれはスクリーニングの頸動脈エコー検査でdAVFを疑い診断し得た症例を経験したので報告する.
【症例】
症例は60歳男性で,特に既往歴はなく,頭痛も認めていなかった.某年某月に健康診断での頸動脈エコー検査で内中膜複合体の肥厚を認めたため受診した.理学的所見では眼窩部や頸部の血管雑音は聴取せず,神経学的所見に異常はなかった.当院での頸動脈エコー検査では,両側頸動脈洞に中等度の動脈硬化を認めた.パルスドプラによる血流波形解析では,両側総頸動脈および内頸動脈(internal carotid artery)に左右差や異常所見はなく,左椎骨動脈の低形成が疑われた.しかし,外頸動脈(external carotid artery:ECA)の観察では,右拡張末期血流速度(EDV:end diastolic velocity)が著明に上昇しており,左の8.3cm/sに対し右は31.6cm/sであった.右ECAの抵抗係数(resistance index:RI)は0.63で,右ICAのRIが0.58であり,ICA to ECA ratioは0.92であった.右ECAの内頸動脈化が認められたため,頭部MRIを撮像すると,右横静脈洞の外側部およびその周囲に高信号を呈する血流が認められ,dAVFが疑われた.DSAでは後頭動脈からS状静脈洞部へのシャント血流があり,確定診断に至った.
【考察】
頸動脈エコー検査によるdAVFの診断はECAのRIが0.7以下,ICA to ECA ratioが0.9以下の場合強く示唆されることが知られている1).本症例では右ECAのRIは低下していたが,ICA to ECA ratioは0.9以上であった.しかしながらECAの血流波形に左右差を認めており,頸動脈エコー検査でdAVFを疑うことができた.
【結語】
ECAの血流波形は検査されない事も多いが,dAVFを疑う有用な項目と思われる.
【参考文献】
1)Tsai LK, Yeh SJ, Chen YC, et al. Screen for intracranial dural arteriovenous fistulae with carotid duplex sonography. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2009;80(11):1225-1229.