Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 甲状腺
甲状腺一般示説2

(S771)

中甲状腺静脈内を進展し,上大静脈に腫瘍塞栓を形成した甲状腺濾胞癌症例

A case report of follicular thyroid cancer with tumor embolism of SVC extended through a middle thyroid vein

中野 恵一1, 2, 星 信大2, 岡山 洋和1, 2, 福島 俊彦1, 2, 逸見 正彦3, 佐久間 信子3, 大石 学3, 佐藤 綾子3, 鈴木 悟1, 鈴木 眞一1

Keiichi NAKANO1, 2, Nobuhiro HOSHI2, Hirokazu OKAYAMA1, 2, Toshihiko FUKUSHIMA1, 2, Masahiko HENMI3, Nobuko SAKUMA3, Manabu OOISHI3, Ayako SATOU3, Satoru SUZUKI1, Shinichi SUZUKI1

1福島県立医科大学甲状腺・内分泌学講座, 2福島県立医科大学器官制御外科学講座, 3福島県立医科大学放射線医学健康管理センター

1Department of Thyroid and Endocrinology, Fukushima Medical University, 2Department of Organ Regulatory Surgery, Fukushima Medical University, 3Radiation Medical Science Center for the Fukushima Health Management Survey, Fukushima Medical University

キーワード :

中甲状腺静脈内を進展し,内頚静脈〜上大静脈に腫瘍塞栓を形成した甲状腺濾胞癌症例に対し根治的切除を行い得た症例を経験した.術前に施行した超音波検査で,静脈内への進展と思われる所見を認め,また,術中超音波にて上大静脈内の腫瘍塞栓を観察しえたため報告する.
症例は,70歳代女性.右頚部の硬結を自覚し,近医受診後,当科へと紹介された.触診では甲状腺右葉全体が硬く触知された.頚部超音波では,甲状腺右葉をほぼ置換するような粗大石灰化を伴う腫瘍を認めた.腫瘍は尾側へと進展し,右総頚動脈の腹側を経て,右内頚静脈へと至り,右内頚静脈内に腫瘍塞栓を形成していることが確認できた.明らかな腫大リンパ節は認めず.頸胸腹部造影CTにて,内頚静脈内の腫瘍塞栓(もしくは血栓)は,右腕頭静脈を経由し上大静脈内にまで達していた.明らかな肺・肝転移は認められなかった.肺血流シンチグラムでは,肺左下葉に肺塞栓像を認めた.細胞診では,suspicious(濾胞癌疑い)であり,採血ではHTGが6500ng/mlで異常高値であった.
体外循環の準備も行いながら,胸骨縦切開下に甲状腺全摘術,右内頚静脈合併切除,右腕頭静脈内腫瘍塞栓摘出を行った.甲状腺右葉を置換する腫瘍が尾側右側へと右内頚静脈内に連続的に進展していた.腫瘍から内頚静脈内へと進展する連結部分は周囲との癒着なく,被膜に包まれており,そのまま内頚静脈壁へと移行しており,中甲状腺静脈内を腫瘍が進展しているものと判断した.上大静脈内の腫瘍塞栓は,術中超音波で,静脈壁への固着がないことを確認した上で,右腕頭静脈を縦に切開し,抜去した.術後病理でも,甲状腺実質内の腫瘍栓から,内頚静脈内塞栓への連続性が認められた.
術後超音波動画像を再度確認したところ,甲状腺腫瘍から内頚静脈内腫瘍塞栓への連続性と,静脈壁の連続被覆と思われる像が確認できた.
術後外来ablationを施行し,甲状腺床以外への明らかな集積は認めないが,術後HTGは350ng/ml程度への低下にとどまり,再発に注意しながら外来にて経過観察中である.
甲状腺濾胞癌が,静脈内に進展し,静脈内腫瘍栓・血栓を形成した症例報告は,散見される.文献的な考察を交えて,報告する.