岸 宗佑^{1, 6}, 下田 一成², 舩本 康申³, 横井 宏隆⁴, 谷本 由香利³, 平林 沙織⁴, 中川 幸智代³, 谷井 菜緒子³, 岸 真理子⁵

Sosuke KISHI^{1, 6}, Kazushige SHIMODA², Yasunobu FUNAMOTO³, Hirotaka YOKOI⁴, Yukari TANIMOTO³, Saori HIRABAYASHI⁴, Sachiyo NAKAGAWA³, Naoko TANII³, Mariko KISHI⁵

¹香川大学医学部腫瘍病理学, ²社会医療法人財団大樹会総合病院回生病院放射線部, ³社会医療法人財団大樹会総合病院回生病院病理部, ⁴社会医療法人財団大樹会総合病院回生病院検査部, ⁵社会医療法人財団大樹会総合病院回生病院内科甲状腺外来, ⁶日鋼記念病院病理診断科

¹Department of Pathology and Host-Defence, Academic group of Medicine, Kagawa University, Onco-Pathology, ²Kaisei Hospital, Radiology department, ³Kaisei Hospital, Pathological department, ⁴Kaisei Hospital, Clinical laboratory department, ⁵Kaisei Hospital, The department of internal medicine, thyroid section, ⁶Nikko memorial hospital, Pathological department

キーワード :

【背景および目的】
腫瘍と血管増生については，多くの臓器において関連が示されている．甲状腺腫瘍においても，腫瘍と血管増生について超音波Doppler法を用いた検討が数多くされているが，良悪の判定に有用との報告は少ない．病理組織学的にも甲状腺結節の内部や辺縁に血管の増生を確認できるが，組織型により血管の分布や血管径および血管構造に違いがあるか病理組織学的手法を用いて検討を行った．
【方法】
外科切除された42結節の結節性甲状腺腫の病理組織像と術前超音波Doppler像との比較検討を行った．病理組織学的検討として，HE標本のみで血管の判定困難な症例は，免疫染色にて血管内皮細胞マーカーであるCD34抗体を用いて血管を確認し，EVG染色を加えることで弾性板や平滑筋を確認し，血管構造を判定した．
【結果および考察】
超音波Doppler法では，組織型や良悪性と血管分布や血流量の間に統計学的に有意な所見は見られなかった．良性病変では，血管径の比較的大きな動脈性血管が見られる傾向があった．悪性病変では，Doppler法では内部に血管が乏しい結節であっても，病理組織標本では，微小血管の増生が結節内部で見られた．甲状腺結節の周囲や内部で様々に拡張した動脈性，静脈性血管が分布する結節では，内部の微小血管をDopplerにて描出困難な可能性も考えられた．今回の検討で超音波Doppler法と病理組織学的検討の相違は，拡張した血流量の多い血管が存在する場合に微小血管の描出が比較的難しくなる可能性や乳頭癌を始めとして周囲に線維性被膜や石灰化が生じた結節では超音波評価が十分できないこと，病理組織標本で評価した断面はエコー画像と全く同一ではないことやホルマリン固定後の血管は虚脱しえるため病理組織学的な評価にも限界があることなどが考えられた．今回検討した症例の病理組織像と超音波像を合わせて報告する．