Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
産科(その他)

(S756)

分娩前後での子宮のflexionの変化−分娩様式および帝王切開創楔状欠損との関連−

Change of the direction of the uterus in approximately the delivery

櫻井 理奈, 梁 栄治, 鎌田 英男, 瀬戸 理玄, 松本 泰弘, 木戸 浩一郎, 綾部 琢哉

Rina SAKURAI, Eiji RYO, Hideo KAMATA, Michiharu SETO, Yasuhiro MATSUMOTO, Koichiro KIDO, Takuya AYABE

帝京大学医学部付属病院産婦人科

obstetrics and Gynecology, Teikyo University

キーワード :

【目的】
帝王切開率の増加と経腟超音波断層法の普及により,子宮筋層切開創部の超音波像についての報告が増えている.2013年のレビュー(文献)によると創部の切れ込み像のリスクファクターとして,筋層一層縫合,複数回の帝王切開および子宮の後屈候補として挙げられている.現在,子宮のflexionが前屈であるか後屈であるかについては,特に癒着によるものでなければ病的な意義はないと考えられている.そのため,分娩前後のflexionについて関心がもたれていない.我々は分娩前後の子宮のflexionとその変化について,経腟分娩と帝王切開という分娩様式の違いで比較し,さらに帝王切開例では切開創部の楔状欠損との関連について検討した.
【対象】
帝京大学病院で2010年1月1日〜4月30日までに出産となった妊婦235人のうち,妊娠初期と産褥1か月の子宮の経腟超音波所見が残っていた125人を対象として後方視的に検討した.
【方法】
超音波所見において頸部の長軸と体部の長軸との角度を確認できる症例においてflexionを判定した.また帝王切開症例では産褥1か月時に,子宮切開創に楔状の欠損が存在するかどうかを判定した.以上の判定から,妊娠初期に前屈であり,産褥1か月でも前屈であったAA群,前屈から後屈になったAP群,後屈から前屈になったPA群,後屈から後屈のままであったPP群の4群に分け,さらに経腟分娩か帝王切開かで8つの群に分類した.帝王切開例については楔状欠損を認める例がどの群に多いかを検討した.統計的解析はχ2検定によりP<0.05を有意差ありとした.
【結果】
経腟分娩例は84例,帝王切開例は41例であった.
経腟分娩例についてはAA群63例(75%),AP群9例(10.7%),PA群なし(0%),PP群12例(14.3%)であった.帝王切開例についてはAA群28例(68%),AP群5例(12%),PA群6例(15%),PP群2例(5%)であった.
経腟分娩例については分娩前後で子宮のflexionが変わらないもの(AA+PP群)が89%で,方向が変わったもの(AP+PA群)が11%であったのに対し,帝王切開ではAA+PP群が73%で,AP+PA群が27%となり帝王切開症例において分娩前後のflexionが変わる例が多かった(p=0.02).
帝王切開例での筋層楔状欠損の有無についてみると,AA群で楔状欠損を認めるのは28例中5例(17.9%),AP群では5例中3例(60%),PA群で6例中1例(16%),PP群では2例中1例(50%)であった.帝王切開前後でflexionが変わらないAA+PP群では,30例中6例(20%)に欠損を認めたのに対して,flexionが変化したAP+PA群では11例中4例(36%)に認めた(有意差なし).楔状欠損を認めた10例のうち4例(40%)でflexionが変わっていたことになる.
【考察】
経腟分娩例に比べて,帝王切開例では分娩前後にflexionが変化している例が多かった.この原因としては陣痛の有無,子宮口開大の程度,子宮への切開の有無などの要因が可能性として考えられる.有意差はなかったが,flexionに変化があった群に楔状欠損が多い傾向にあったことや,楔状欠損例の4割でflexionに変化があったことを考えると,子宮への切開がflexion変化の一因である可能性がflexionが否定できない.
【文献】
Bij de Vaate AJ, et al. Ultrasound Obstet Gynecol. 2013 Aug 30. doi : 10.1002/uog.13199.