Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
異常妊娠/婦人科疾患

(S751)

妊娠28週に切迫子宮破裂に至った卵管角妊娠の一症例

Impending ruputure of a uterine horn pregnandy at 28 week’s gestation

大場 智洋, 長谷川 潤一, 仲村 将光, 松岡 隆, 市塚 清健, 関沢 明彦

Tomohiro OBA, Junichi HASEGAWA, Masamitu NAKAMURA, Ryu MATUOKA, Kiyotake ICHIZUKA, Akihiko SEKIZAWA

昭和大学産婦人科学講座産婦人科

Obstetrics and gynecology, Showa University, school of medicine

キーワード :

【緒言】
子宮破裂は母胎の生命を脅かす,重篤な産科疾患の一つである.しかしながら,その前段階の切迫子宮破裂を出生前に診断することは,困難な場合がある.我々は切迫子宮破裂症例の管理中に胎盤辺縁出血が出現し,分娩に至った症例を経験したため報告する.
【症例】
30歳,0回経妊,特記すべき既往歴,子宮手術の既往はない.自然妊娠後,妊娠初期より健診を受けていた.妊娠初期に性器出血があり,絨毛膜下血腫が確認されていたが,その他特記すべき異常は認められず,自然消失していた.妊娠26週2日,規則的な腹痛と性器出血,臍部左側に腫瘤が蝕知されることを主訴に近医を受診し,切迫早産の診断で当科紹介になった.来院時,腹部触診で頻回な子宮収縮を認め,性器出血を認めた.左側腹部に手拳大の弾性,軟な腫瘤を触知した.子宮口は閉鎖しており,経腟超音波で子宮頸管長は,38mmであった.経腹超音波検査で,胎児はBPD : 66mm, AC : 222mm, FL : 44mm, FW : 959g(+0.23SD), AP : 38mmで明らかな形態異常を認めなかった.左側腹部に腫瘤として触知される部分には,子宮底部卵管角付近から突出した腫瘤像を認め,その中には胎盤が折りたたまれたように存在した.胎盤の厚さは30mm,胎盤と子宮筋層や周囲にecho free spaceはなかった.カラードプラでは胎盤周囲にflowを認めなかった.同部位の子宮筋層は菲薄していた.以上より,左卵管角部の胎盤付着による切迫子宮破裂,切迫早産と診断した.塩酸リトドリンを開始し,子宮収縮の改善を認めた.妊娠中は子宮破裂,常位胎盤早期剥離などに注意し,頻回な腹部超音波検査,胎児心拍モニタリング検査を施行した.妊娠27週3日,腹部超音波で胎盤辺縁に39×24mm大,円形で内部が網状の画像所見を有するlow echoic areaを認め,カラードプラで血流は認めなかったことから,胎盤辺縁血腫と診断した.妊娠28週1日,子宮収縮が頻回となり,超音波検査では胎盤辺縁のlow echoic areaは2か所あり68×19mmと93×36mm大と拡大していた.胎児心拍数図では,prolonged decelerationを認めた.以上より,子宮破裂,胎盤早期剥離と診断し,緊急帝王切開術を施行した.下部横切開で子宮を切開.児を娩出した.児娩出時,胎盤辺縁血腫の排出を認めた.術中出血量1065g,出生体重1173g,Apgar score(1/5分値)は8/9点,臍帯動脈血pH 7.231であった.子宮左卵管角は,6x7cmに膨隆していた.膨隆部の子宮筋層は菲薄しており,漿膜は保たれていたが,暗赤色に胎盤が透見でき,中に胎盤が嵌頓していた.胎盤は膨隆部を圧迫することで娩出できた.卵管角の胎盤付着による切迫子宮破裂と診断した.出血はアクティブでなかったので,卵管角部を楔状に切除し,子宮筋層を3層縫合した.術後7日目の超音波所見では,切開部子宮筋層の厚さは20mmあり,その他の術後経過も良好であり退院した.
【考察】
本症例は,卵管角部の胎盤付着が惹き起こした切迫子宮破裂であったと考えられた.本症例は,健診中には胎盤の位置異常には気付いていなかったが,破裂前に腫瘤触知や子宮収縮によって切迫子宮破裂を知ることができた.本症例のような胎盤位置異常を見逃さないようにするためにも,健診中の胎盤の位置確認や筋層の状態を確認することは重要であると再認識した.